ヒツジグサ

ヒツジグサ(スイレン科)[未草]

未の刻(午後2時あるいは午後1時~3時までの間)に咲くということからこの名がある。ある人の観察では午前10時頃から咲き出し、午後2時を過ぎた辺りから閉じ始め、夕方には完全に閉じるという。むしろ未の刻に花を閉じることが名の基になったとも考えられる。ただ、天候などの影響もあり、実際には一定していないようだ。

低地の池沼から亜高山帯の高層湿原まで、幅広く生える多年生の水草。根茎は太く短く、多数の根生葉を出す。
根生葉は長柄があり水面に浮かび、長さ8-19cm、幅5-12cmの卵円形~楕円形で基部は深い心形で裂片はしばしば重なる。両面無毛で表面は光沢があり裏面は暗紫色を帯びる。
根生する長い花柄の先に直径5cmほどの花が1個頂生する。花は雌性先熟で3-6日間、開閉を繰り返して水中に沈む。萼片は4個あり、広披針形~狭卵形で外側は緑色で内側は白色。花弁は白色で8-15個あり、外側のものは萼片とほぼ同長。雄しべは多数あり、外側の花糸ほど幅が広く花弁状になる。葯は黄色。雌しべは心皮が合着したもので、8個の柱頭の外側に偽柱頭とよばれる突起が8個ある。
果実は卵球形で海綿質の液果で、水中で熟し多数の種子を散布する。

葉の基部の切れ込みが浅く、花弁や萼片の幅がやや広いものをエゾノヒツジグサというが、明確に区別することは難しく、YListでは区別していない。
柱頭と周辺の雄しべが鮮やかな濃紅色となるものをエゾベニヒツジグサという。
花色が多彩な熱帯性のスイレンもそれなりに美しいが、ヒツジグサには、外来種にはないしっとりと落ち着いた美しさがある。なお、「ヒツジグサ」と検索するとどう見ても外来の温帯性または熱帯性スイレンに見えるものが多数出てくるので気をつけたほうがいい。
花期:6-9月
分布:北・本・四・九
撮影:2005.8.27 秋田県田沢湖町
ヒツジグサ-2
花弁は少なく、8-15個。 2003.6.22 青森県木造町

ヒツジグサ-3
花弁が8個程度のもの。花弁が少ない方が趣がある。雄しべは多数あり、外側のものほど幅が広く、花弁状になる。 2005.7.9 秋田県田沢湖町

ヒツジグサ-4
葉は円く、基部は深い心形。 2003.6.22 青森県木造町


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