ミミガタテンナンショウ

ミミガタテンナンショウ(サトイモ科)[耳形天南星]

名は、仏炎苞の口辺部が耳たぶ状に広く張り出していることからついたもの。

山野のやや明るい肥沃な林内、林縁に生える雌雄異株の多年草で、高さ30-80cmになる。岩手県から大分県まで、関東を中心に隔離分布する。
地下に扁球形の球茎があり、偽茎部(葉柄)は紫色の蛇紋があり、花序柄より短い。
葉は2個で鳥足状、小葉は7-11個あり、卵状長楕円形~長楕円形で縁は波打ち、先はとがる。葉は開花より遅れて展開し、花よりも丈が低いが、花後に伸びて全体に大きくなる。
仏炎苞は内側に著しい光沢があり、長さ10-15cm、筒部は長さ4.5-6cmで淡緑色の地に褐紫色のぼかしが入る。舷部は卵形で暗褐紫色、先はとがる。口辺部は幅0.8-1.5cmの耳たぶ状に開出する。花被はなく、肉穂花序には雄花は雄しべだけが、雌花は雌しべだけがつく。花序の付属体は淡緑色で直径0.3-1cmの棒状で仏炎苞より外に出る。
果実は卵球形の液果で、トウモロコシに似て果軸にびっしりとつき、朱赤色に熟す。中に少数の球形の種子がある。

球茎や果実は有毒で、中毒例も多数あるので、子供が口にしないよう注意が必要。
本種のほかテンナンショウ属の植物は、雌雄は地下の球茎の生長具合によって決まることが知られている。小さい株は無性株で、ある程度大きくなると雄株に、さらに大きくなると雌株になり、一度雌株になっても、栄養状態が悪くなると雄株に戻るのだという。雄株もまた状態によって無性株に戻るらしい。同一花序に雄花と雌花が並存する株もあるという。
花期:3-5月
分布:本(岩手県以南、関東地方、山梨県、兵庫県)・四(南西部)・九(大分県)
撮影:2008.4.28 山梨県都留市

花序柄は偽茎部より長い。葉はふつう2個。 2009.5.9 岩手県一関市

ミミガタテンナンショウ-2
花序の付属体は淡緑色の棒状。 2018.3.30 東京都八王子市

ミミガタテンナンショウ-4
花序の付属体は仏炎苞から突き出る。 2023.3.15 神奈川県厚木市

ミミガタテンナンショウ-5
上から見たところ。口辺部の張り出しがよく分かる。 2018.4.10 東京都八王子市


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