ニガクサ(シソ科)[苦草] |
牧野日本植物図鑑には「和名ハ苦草ノ意ナレドモ、本品ノ莖葉ハ苦カラズ。」と書いているのみでこれについての確かな考察はなく、名の由来は分かっていない。ただ、実際に生葉をよく噛んでみると特有のえぐみは感じるので、これを苦いと表現したのだろうと思う。 山野のやや湿った半日陰に生える多年草。茎は断面が4角形でほぼ無毛、ときに下向きの細毛があって高さ30-70cmになる。地中に細長い走出枝を出して広がる。 葉は長さが葉身の1/7に満たないくらいの柄があって対生し、ほぼ無毛で脈は表面でへこみ、長さ5-10cm、幅2-3.5cmの卵状長楕円形~広披針形で縁に整った鋸歯がある。 茎の先や上部の葉腋に基部から分枝した長さ3-10cmの総状花序を数本出し、淡紅色の花を多数つける。萼は長さ4mmの筒状で5歯があり、まばらに短毛があるが腺毛はない。上歯は先がとがり、果時にも先がすぼまない。花冠は長さ1-1.2cmの2唇形。下唇は3裂して中央裂片が著しく大きくて舌状に張り出し、上唇は2裂し小さくて目立たず、下唇の側片についた小突起状。全体としては5裂した1唇形花に見える。雄しべは4個で上唇の裂け目から雌しべとともに上~前に長く突き出る。花時の萼にはしばしばカメムシの仲間であるヒゲブトグンバイが寄生してニガクサツボミフクレフシとよばれる虫癭(虫こぶ)ができる。 果実は萼筒に包まれた痩果状の4分果で、分果は長さ約1.5mmで網目模様がある。 よく似たツルニガクサは、萼に腺毛が密生し、萼の上歯は鈍頭。テイネニガクサは茎がほぼ無毛で節にだけ開出毛がある。萼歯は全て鋭くとがる。エゾニガクサは茎や花序に開出した粗い毛が密生する。エゾニガクサに似て、開出毛が短く、葉の鋸歯が大きいものをイヌニガクサといい、東北地方にまれに生える。 花期:7-9月 分布:日本全土 撮影:2017.7.28 横浜市栄区 |
下唇中央裂片だけが著しく大きい。 2017.7.28 横浜市栄区 花序や萼に腺毛はない。萼の上歯は鋭くとがる。 2017.7.28 横浜市栄区 しばしばヒゲブトグンバイの寄生による虫癭(虫こぶ)ができる。 2017.7.28 横浜市栄区 葉は表面で脈がへこむ。 2020.9.15 横浜市栄区 葉の裏面で脈が突出する。ほぼ無毛。 2022.7.8 神奈川県鎌倉市 |
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