セリモドキ

セリモドキ(セリ科)[芹擬]

名は、全体にセリに似ていて異なるものの意。タイプ標本は牧野富太郎が伊吹山で採集したもの。主に日本海側に生えるが、太平洋側である神奈川県でも数か所自生が確認されている。

山地や海岸のやや湿ったところに生える日本特産の多年草。茎は中空で直立し、上部で分枝して高さ30-90cmになる。節や花序に微細な乳頭状突起がある。
葉は長さ10-25cmの2-3回羽状複葉で、小葉はやや厚く、長さ2-7cm、幅1.5-4cmの狭卵形~卵形で不規則に切れ込んで先は鋭くとがる。表面は無毛。ときに裏面脈上と鋸歯の縁に短毛状の小突起が出る。葉柄の下部は鞘状に広がる。
茎頂や枝先に複散形花序を出す。大散形花序は10-30個の小散形花序からなり、小散形花序は約20個の小花からなる。大散形花序は直径5-10cm、柄は長さ2-4cmでほぼ同長、総苞片はないかあっても少数で細く、長さは0.5-1.3cm。小総苞片は約10個あって長さ0.7-1cmの線形で毛があり、花と同長かそれ以上。花は直径約2mmの白色で20個ほど密につく。花弁は5個で同大、雄しべは5個、萼歯片は長3角形で明瞭。
分果は長さ4-5mmの扁平な卵状楕円形で、背隆条は高い翼状となる。油管は多数あって、太さは不揃いで種子の全周を包む。

イブキゼリモドキは、伊吹山に産するとしてかつて和名は「イブキゼリ」とされていたが、伊吹山にあるのはこのセリモドキであることが分かり、和名がイブキゼリモドキと改められた経緯がある。「イブキ」がつかない別の和名が提案されればもっとすっきりするような気がする。セリモドキはセリモドキ属だが、イブキゼリモドキはシラネニンジン属。
花期:7-9月
分布:本(広島県以東の主に日本海側)
撮影:2022.8.8 神奈川県大和市
セリモドキ-2
大散形花序は10-30個の小散形花序からなる。 2022.8.8 神奈川県大和市

セリモドキ-3
花弁は5個で同大。 2022.8.8 神奈川県大和市

セリモドキ-4
萼歯片は長3角形で明瞭。 2022.8.8 神奈川県大和市

セリモドキ-5
小総苞片は約10個あり、花と同長かそれ以上。 2022.8.8 神奈川県大和市

セリモドキの葉
春にまず葉が萌え出す。 2022.4.18 神奈川県大和市

セリモドキの葉-2
葉は2-3回羽状複葉。小葉は不規則に切れ込む。 2022.8.8 神奈川県大和市

セリモドキの葉-3
小葉の裏面。 2022.8.8 神奈川県大和市

セリモドキの葉柄
葉柄下部は鞘状になって広がる。 2022.8.8 神奈川県大和市

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