ウバユリ(ユリ科)[姥百合] |
名は、子守役の姥(乳母)にたとえたものといい、世話をしていた幼児が花の盛りの年頃になる時分には、子守をしていた女性はもう歯が抜ける歳になってしまっていることを、花が終わると葉(歯)がなくなることに掛けたものといわれる。直立して大きな葉をつけるので、大きいという意味の「ウバ」が冠せられたという説もあり、そっちのほうが本当らしく思える。ユリの名があるが、通説ではユリ属ではなく独立したウバユリ属とされる。 主に関東地方以西に生え、昭和初期には東京全域で普通に見られたという。多くの図鑑では日本海側の分布を石川県以西としているが、秋田県北部でウバユリと思われるものがの自生を確認している。東北地方では少なく、代わりに大型のオオウバユリが生える。オオウバユリは北海道と本州中北部に分布し、大型で花が10-20個咲く変種。 山野のやぶや照葉樹林下に生える多年草。地下に根生葉の柄の基部が膨れた少数の白色鱗片からなる卵形の鱗茎がある。根は茎の下部から多数出る。若苗は根生葉だけだが、年数を経て鱗茎が太ると、直立した太い茎を0.6-1m伸ばし、花をつけるようになる。一度花を咲かせると完全に枯れ、元の鱗茎はなくなって、根元に新しい鱗茎ができる。このような植物を一回繁殖型植物(一回結実性植物・一稔性植物)という。 ユリといえば、その語源ともいわれるように風で揺れているイメージがあるが、本種は丈夫な茎をもってすっくと立っているので多少風があっても揺れることはない。茎は無毛、中空で中下部に5-6葉が集まってつく。 葉は長い柄があり、両面無毛で光沢があり、単子葉植物だが網状脈がよく目立ち、長さ15-30cm、幅7-15cmの卵状楕円形で基部は心形、先はとがる。若い葉は特に強い光沢があり、網状脈が赤褐色に染まることが多い。花時に葉は枯れ始めるが、ときに花時に枯れてしまっているときもある。 茎頂の総状花序に長さ12-17cmで緑白色の漏斗形の花を横向きにふつう3-4個、多いもので10個ほどつける。花柄は短い。苞は狭披針形で落ちる。花被片は倒披針形で6個がやや不規則に集まり、先はあまり開かず先端は反る。ときに内側に紫褐色の斑点がある。雄しべは6個、長さは不同で葯は淡褐色。子房は上位。 果柄は斜上し、果実は長さ4-5cmの楕円形の蒴果。種子は扁平で長さ1-1.3cmの鈍3角形、周囲に広い膜質の翼がある。 若葉や鱗茎は食用になり、鱗茎からは良質のデンプンが採れる。民間薬として解熱、強壮に用いられた。 花期:7-8月 分布:本(太平洋側は宮城県、日本海側は秋田県以南)・四・九 撮影:2017.7.28 神奈川県横須賀市 |
花被片はあまり開かず、先端は強く反る。 2017.7.28 神奈川県横須賀市 若い葉は光沢があり、網状脈が赤褐色に染まることが多い。 2017.3.24 神奈川県葉山町 葉はやや集まってつく。 2018.6.19 神奈川県藤沢市 若い果実。果柄は斜上して果実は上向きにつく。 2017.9.5 神奈川県横須賀市 熟すと3個に裂開する。 2017.12.11 神奈川県横須賀市 裂開した果実には膜状の翼のある種子が詰まっている。 2019.12.16 横浜市磯子区 |
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