ヤマコウバシ(クスノキ科)[山香し] |
名は、枝や葉を折ると強い香りがあることからついたもの。別名モチギ、ヤマコショウという。山陽地方では葉を粉にして大麦や小米の炒り粉に混ぜて団子を作り、タンバ餅といって食べた。別名のモチギの由来であろう。ヤマコショウは果実に辛味があることから。 丘陵地~山地に生える落葉低木で、高さ2-6mになる。雌雄異株の樹木であるが、日本では雄株は知られておらず、雌株は花粉を受け取らず単為生殖で結実する。このような特質をもつ日本の全てのヤマコウバシは、たった1本の雌株から生じたクローンであることが最近の研究によって示された。 新枝に初め曲がった短毛があり、2年枝の樹皮は淡褐色で皮目が入り、成木は茶褐色で縦に細い割れ目が入るものもある。 冬芽は紡錘形で葉腋に生じ、芽鱗は赤褐色。同一の冬芽に葉と花序が混在する。頂芽はない。 葉は互生し、質はやや厚くて硬く、表面は濃緑色、裏面は灰白色で初め絹毛を密生するが、後に少なくなる。長さ5-10cm、幅2.5-4cmの長楕円形~楕円形、縁は全縁で波打ち、基部はくさび形、先は鈍くとがる。葉柄は長さ3-4mmと短い。冬でも落葉せずに枯れたまま翌年の萌芽時まで残るので、冬季のフィールドではよく目立つ。冬でも枯葉をつけているのはほかにカシワやクヌギなどがあるが、葉形が全く違うのですぐ分かる。 葉の展開と同時に絹毛を密生した短い花柄を3-4個伸ばし、淡黄緑色で小さい目立たない花をつける。花被片は6個、長さ約1.5mmの広楕円形で、花後に脱落する。雌花は葯がない雄しべ(仮雄しべ)が9個ある。子房は長さ1.5mm、花柱は長さ1mmで柱頭は盤状で縁は反り返り、花被から突き出る。 長さ1-1.5cmの果柄の先に、直径5-8mmの球形の液果がつき、黒熟する。口に入れると辛みがある。種子はほぼ球形で2本の隆起線がある。 クロモジやアブラチャンと葉が似ているが、ヤマコウバシの葉柄はごく短いので見分けられる。 花期:4-5月 分布:本(山形、宮城県以南)・四・九 撮影:2019.4.4 横浜市南区 |
春、絹毛を密生した若葉が萌え出る。 2022.4.6 横浜市南区 日本の全てのヤマコウバシは、1本の雌株からの生じたクローンであるという。 2019.4.4 横浜市南区 花柄は絹毛を密生。花被片は6個。雄しべは葯がない。 2022.4.6 横浜市南区 葉は濃緑色で硬く、縁は波打つ。 2020.7.2 川崎市多摩区 葉は秋に淡く色づく。 2022.11.17 横浜市保土ケ谷区 翌年の萌芽時まで枯葉のまま落ちない。 2018.2.6 横浜市南区 冬の陽光を受けて輝く枯葉。 2020.1.9 川崎市宮前区 若い果実。 2020.7.2 川崎市多摩区 果実は黒熟する。 2021.10.7 川崎市多摩区 樹皮。 2022.4.11 横浜市金沢区 |
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