ヤマモモ(ヤマモモ科)[山桃] |
山地に生え、桃のような丸い実をつけることからこの名があるが、異説もある。 庭園、公園や社寺によく植栽される。街路樹としても利用されるが、雌株は熟して落ちた果実が路面を汚すので、雄株が用いられることが多い。徳島県では県の木に、高知県では県の花に指定している。市の木、町の木としているところも数か所ある。野生品より果実が大きくて甘い改良品種はやはり徳島県や高知県が産地だが、傷みやすいので市場に流通することはあまりない。 樹皮は漁網などを染める染料とされた。また、乾燥したものは楊梅皮といってタンニンを含むので下痢や打撲傷に煎服し、湿疹やかぶれに外用する。 静岡県伊東市富戸の蓮着寺のヤマモモ(雌株)は日本最大といわれ、国指定の天然記念物となっている。 沿海の照葉樹林に生える雌雄異株の常緑高木で、よく分枝して高さ6-10m、高いものは25mに達する。こんもりとした丸い樹冠となる。樹皮は灰白色で平滑だが葉痕がこぶ状に残り、ちりめん状の細かい縦じわがある。老木では縦に浅くひび割れる。若い枝は新葉とともに暗紫赤色を帯びる。 葉は枝先にやや集まって互生し、長さ6-12cm、幅1-3.5cmの広倒披針形~倒披針形で成木では全縁、幼木では鋭い鋸歯があり、先は鈍頭~やや鋭頭、基部はくさび形で柄に流れる。革質で両面無毛、表面は濃緑色で裏面は淡緑色で淡黄色の透明な油点が散在し、芳香がある。葉柄は長さ0.5-1cmで托葉はない。 前年枝の上部の葉腋に穂状の花序をつける。花被はない。雄花序は長さ2-5cmで多数の雄花が密につき、雄花は1個の苞と2 -3個の小苞に包まれ、5-8個の雄しべがあるが、小苞を欠くことも多い。雌花序は長さ約1cmで雌花はややまばら。雌花は1個の苞と2-3個の小苞に包まれて1個の雌しべがあり、花柱は暗紅色で2深裂する。 果実は核果で、6月に1花序に1-3個実る。直径1-2cmの球形で外果皮に多汁質の粒状突起が多数あって暗赤色に熟し、食用となる。少し松ヤニ臭いが甘酸っぱく、生食のほかジャムや果実酒などに加工される。花に1種子の入った核がある。核はやや扁平な卵形で淡褐色の毛に被われる。 まれに果実の白いものがあり、シロヤマモモ(シロモモ)という。 ホルトノキと葉がよく似ているが、ホルトノキには赤い葉が混じり、裏面に油点がなく、成木でも葉縁に鋸歯がある。 花期:3-4月 分布:本(関東地方南部・福井県以西)・四・九・沖 撮影:2019.5.31 神奈川県藤沢市 |
雄花の葯が裂開する前の雄花序。雄花序は長さ2-5cmでやや垂れる。 2020.3.11 神奈川県藤沢市 雄花の葯が裂開した雄花序。 2021.3.23 横浜市中区 雄花には5-8個の雄しべがある。 2020.3.31 横浜市中区 雌花序は短く、直立する。 2020.3.31 横浜市中区 雌花の花柱は暗紅色で2深裂する。 2020.3.31 横浜市中区 外果皮に粒状突起が多数あり、見かけはコウゾやキイチゴ類の集合果と似ている。 2022.6.20 横浜市金沢区 葉は無毛で最大幅は先寄りにある。成木の葉にふつう鋸歯はない。 2022.6.20 横浜市金沢区 裏面に淡黄色の油点がある。 2022.6.20 横浜市金沢区 樹皮は白っぽくて滑らかだが、こぶ状の葉痕が残っている。 2018.3.25 横浜市中区 |
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