ヤチトリカブト(キンポウゲ科)[谷地鳥兜] |
名は、谷地(湿地)に生えるトリカブトの意だが、たまたまタイプ標本が上高地の谷あいから得られたためについたもので、本種が湿地を好んで生えるというわけではない。別名イオウザワトリカブトという。太平洋側に分布するホソバトリカブトの亜種。 北アルプスの亜高山帯~高山帯の湿った高茎草原に広く生える日本固有の多年草で、茎は直立して高く伸び、0.7-1.5mになる。トリカブト亜属全てにいえることだが、地下に紡錘状の塊根があり、秋に子根を残して母根は枯れるので多年草とはいいにくい。子根も親植物の一部であり、1年草でもないので疑似1年草といわれる。 葉は互生し、3中裂~深裂し各裂片はさらに2-3裂する。終裂片は披針形~卵状披針形。ホソバトリカブトより切れ込みは浅い。 茎頂と上部の葉腋から花序を伸ばし5-10個の青紫色の花をつける。標高の低いところでは花序はよく分枝して円錐状、高山の風衝地では散房状になる。花柄には開出毛と腺毛が混生する。花弁状の萼は5個あって開出毛が密生し、頂萼片は円錐状、2個の側萼片は円形~倒卵形、2個の下萼片は楕円形。花弁は2個でイの字形で頂萼片の内側にある。雄しべは多数あり、ふつう無毛だが少し毛のあるものもある。雌しべは3-5個ある。 果実は袋果で残存花柱がある。種子は多数で鱗片状の横ひだがある。 同じ北アルプスで分布域が重なるミヤマトリカブトは、葉の切れ込みは浅く、花柄に屈毛がある。 トリカブトの仲間は、個々の種類を区別することは極めて難しい。地域的な変異が大きく、また交雑も起こりやすいのでいっそう同定を難しくしている。生えている地域である程度推察されるときもあるが、外側の青い花弁のように見える萼片を取り外して隠れている花弁を見てみなければならないことも多い。 花期:8-9月 分布:本(北アルプス、鳥甲山、雨飾山) 撮影:1997.7.20 富山県大山町 |
葉の切れ込みが特に深いもの。 1997.7.20 富山県大山町 |
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