ユキノシタ(ユキノシタ科)[雪の下・雪の舌] |
名の由来は①花が雪でその下に葉が見え隠れするため、②雪の下で葉が枯れずに残っているため、③「雪の舌」の意で垂れた2個の花弁を舌にたとえた、④葉の白い斑を雪に見立てた、など多くの説があるが定説はない。「雪の舌」説を取るに足らないとするむきもあるようだが、東北地方ではべご(牛)の舌とよぶ地方もあることを考慮するとむげに否定できないと思う。別名イワブキ、キジンソウ、イトバスといい、そのほかにも各地に多くのよび名が残っている。 昔から植栽され、人家付近に多いことから古い時代に中国から持ち込まれた帰化植物である可能性が強い。 人里近くの林下や湿った岩上などに生える半常緑の多年草で、花茎は20-50cmになる。紅紫色で糸状の走出枝を多数出し、その先に新苗をつくって殖える。茎や葉には赤褐色の粗い毛が多い。根茎は短い。 葉は長さ3-10cmの長い柄があって根生し、葉身は多肉で軟らかく、長さ2-6cm、幅2-7cmの腎円形で基部は心形、縁は掌状に浅く裂ける。表面は暗緑色で脈に沿って白斑があり、裏面は暗紫色を帯びて赤褐色の毛が生える。 茎の上部に円錐状の集散花序をつくり、白色の花を多数つける。花序の枝には紅紫色の腺毛が生える。苞は卵形~披針形。5個の萼裂片は長さ3-4mmの卵状長楕円形で花時に反曲する。花弁は5個で白色、上の3個は長さ3-5mmの卵形で淡紅色の地に2対の濃紅色の斑点と1対の濃黄色の斑点がある。下の2個は大きさ不同の長さ1-2.5cmの披針形で垂れ下がる。雄しべは10個で長さ約5mm。花糸は先がやや広がり、裂開直前の葯は紅色。子房は上位、上部は濃黄色の花盤に包まれる。花柱は2個、長さ約4mmで直立する。 果実は長さ約4mmの卵円形の蒴果。種子は多数でき、長さ約0.5mmの卵形で微細なこぶ状突起がある。 観賞用に庭に植えられ、葉や茎、蕾は食用にも利用される。葉は年中利用でき、天ぷらにすると粗い毛も気にならなくなり、ぬめりと甘みがあってうまい。 開花期に葉を摘んで日干ししたものを虎耳草(こじそう)といい、煎じて解熱、鎮咳、むくみ、利尿、痔などに用いる。民間療法として、生葉をもんだりあぶったりしたものを腫れ物ややけど、湿疹に、葉の汁は耳だれや小児のひきつけ、百日咳に用いられた。 よく似たハルユキノシタは関東地方~近畿地方の一部地域にややまれに分布する。走出枝を出さず、花期は4-5月と早く、葉は緑色で紅色を帯びず白斑もなく、鋭い鋸歯がある。花弁に濃紅色の斑点はなく、基部に濃黄色の斑点があって明らかな爪(細くなった部分)がある。ユキノシタでも紅色の斑点がごく薄く、黄色に見えるものもあるので、葉の特徴や花弁の爪に注目しないと同定を誤る可能性がある。事実、Web上にはどう見てもユキノシタなのにハルユキノシタとして紹介されている画像が散見される。 花期:5-7月 分布:本・四・九 撮影:2005.7.2 青森県八戸市 |
2018.6.1 東京都八王子市 上側の花弁に濃紅紫色の斑紋が入る。 2018.6.1 東京都八王子市 紅色の斑点が薄いタイプ。遠目にはハルユキノシタと間違えやすいが、ハルユキノシタは花の咲く時期が早いし、何よりも自生地が局限されていてどこでも見られるような植物ではない。 2017.5.30 神奈川県逗子市 葉の表面は脈に沿って白斑があり、裏面は赤褐色の毛が生える。 2021.5.10 神奈川県大和市 |
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