アラシグサ(ユキノシタ科)[アラシ草] |
「アラシ」は神奈川、静岡、山梨、長野県などの山岳地帯に多く見られる語彙で、山の急斜面や崩壊地あるいは焼畑跡地・適地を表し、この植物が高山帯の湿った崩壊地に生えることからこの名がある。暴風吹きすさぶところに生えるからという安直な説もあるが誤り。 高山帯の湿った斜面や林縁に生え、高さ20-40cmになる日本固有の多年草。茎に短い腺毛が密生する。根茎は褐色の毛に被われ、横にはって伸びる。 雪田周辺によく生えているが、華やかさは微塵もなく全く目立たないので、登山道脇にアラシグサが咲いていても誰も目もくれず通り過ぎていく。 根生葉は1個あり、5-20cmの長い柄があって、長さ3-8cm、幅5-15cmの腎円形で、掌状に7-9浅~中裂して裂片はさらに3-5個に切れ込み、先はとがる。一見するとモミジカラマツの葉によく似ている。茎葉は数個が互生する。 根茎のところどころから、白く短い腺毛の密生した20-40cmの花茎を伸ばし、直径6-8mmの黄緑色の目立たない5弁花を集散状にまばらにつける。花序にも腺毛が密生する。花弁は長さ2mmほどの倒卵形で鈍頭。萼片は3角形で5個あり、黄緑色で花弁より僅かに長く花時に斜上し、全体で10弁花に見える。中央に黄色い花盤があり、雄しべは5個で裂開直前の葯は淡黄色、花柱は2個で直立し柱頭は小球状。 果実は長さ7-8mmの蒴果。種子は長さ0.5mmの楕円形で微小な小突起が列生する。 花期:7-8月 分布:北・本(中部地方以北) 撮影:1999.7.25 新潟県妙高高原町 |
登山者のほとんどは目に入らないのか興味を示さない。 1998.7.22 岐阜県上宝村 |