エンレイソウ(シュロソウ科)[延齢草] |
名の由来はアイヌ語由来説(アイヌ語でこの植物をエマウリといったものが転訛)、薬としての効能説(漢名の延齢草根からついたとする)があるが定説はない。 早春、山地帯の林内の湿ったところに生える多年草。3数性の植物で、属名Trilliumも3の数字に由来する。 地下の太く短い塊茎から1~数本の茎が分枝せずに伸び、高さ20-40cmになる。 葉は3個が茎頂に輪生し、長さ幅とも10-17cmの卵状菱形で先はとがる。葉の表面は網状脈が目立つ。長さ1.5-3cmの花柄の先に花を横向きに1個だけつける。 内花被片(花弁)は通常はない(種小名のapetalonは「内花被片のない」という意味)。花弁に見える3個の外花被片(萼片)は、長さ1.5-2cmの卵状楕円形で、紫褐色から緑色まで変化に富む。花後、外花被片は落ちずに果時まで残る。エンレイソウの仲間で内花被片がなく、外花被片だけのものは本種だけなので他の仲間との区別は容易。雄しべは6個あり葯は花糸よりやや短い。雌しべの柱頭は3裂し、子房は3室。 果実は直径2cmほどの6稜のある球形の液果で、ふつう紫黒色に熟し、多汁で甘酸っぱいので昔から子供が喜んで食べた。果実の色によってクロミノエンレイソウ、アカミノエンレイソウ、アオミノエンレイソウ(果実が緑色)と分けてよぶことがある。 塊茎は健胃剤などにするが、果実はよく食べられているとはいえ、一応は有毒植物なので素人が扱うのは禁物。 外花被片が緑色、子房は暗紫色または淡緑色、葯が白い品種をトイシノエンレイソウといい、北海道砥石山で見つかったもの。また、エンレイソウに内花被片のある品種はアカバナノエンレイソウという。 エンレイソウ属は交雑しやすく、日本には基本の3種として本種のほかにミヤマエンレイソウとオオバナノエンレイソウがあるが、混生する地域では多様な雑種が見られる。 海岸近くの林内に生えるコジマエンレイソウは、エンレイソウと絶滅したエンレイソウ属の2倍体種の種間雑種とされ、大型で外花被片はとがらず長楕円形で内花被片は0-3個。 エンレイソウとミヤマエンレイソウの種間雑種をヒダカエンレイソウといい、大型で外花被片の先が鋭くとがり、大きな紅紫色の内花被片が0-3個つく。 エンレイソウとオオバナノエンレイソウとの種間雑種はトカチエンレイソウといい、コジマエンレイソウに似る。 花期:4-6月 分布:北・本・四・九 撮影:2008.4.6 青森市 |
外花被片が赤褐色のもの。 2003.4.12 青森県平内町 外花被片が緑色のもの。 2015.5.3 福島県猪苗代町 |
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