ハマオモト

ハマオモト(ヒガンバナ科)[浜万年青]

名は、浜に生え、常緑の葉をオモトに見立ててついたもの。白色の偽茎を白い木綿(ゆう)に見立てて別名ハマユウ(浜木綿)という。ユウとはいわゆる木綿(もめん)ではなく、コウゾの繊維から作った糸のことで、主に幣(ぬさ)として神事の際に榊の枝に掛ける。
宮崎県の県の花であり、横須賀市のほか太平洋側の16市町村で市の花、町の花、村の花とされている。自生北限は神奈川県横須賀市佐島の天神島。

暖地の海岸の砂地に生える常緑の多年草で、花茎の高さ50-80cmになる。茎に見えるのは白い葉の基部がいくつも巻き重なった偽茎で、真の茎ではない。地上の偽茎は長さ30-50cm、直径3-7cmの円柱形で地下の鱗茎に続く。ヒガンバナと同様、全草(特に鱗茎)にリコリンなどのアルカロイドを含み、誤食すると嘔吐や下痢を起こす。
葉は鱗茎から出て叢生し、多肉な帯状で光沢があり、長さ30-70cm、幅4-12cmで先はとがり、基部は鞘状に重なり偽茎となる。
葉腋からやや扁平で太い花茎を伸ばし、芳香のある白色の花を散形状に10-20個つける。花序の基部に膜質で白色、長さ6-10cmの線状長楕円形の総苞が2個ある。花柄は長さ2-3cm、花被は白色で芳香があり、下部は合着して長さ4-6cmの細長い筒状になる。6個の花被裂片は長さ5-9cm、幅5-8mmの広線形で筒部よりやや長く開いて強く反り返る。雄しべ6個は花筒喉部につき、花糸は白色、長さ5cmほどで上部が紫色を帯びる。葯は長さ1.5-2.2cmの線形で、丁字状に花糸につく。花柱は長さ6-10cmの糸状で先が紫色を帯びる。花は夕方に開き始め夜中に全開する。このときが特に芳香が強い。
果実は長さ2-4cmの球形の蒴果。成熟すると花茎が倒れ、不規則に割れて種子が1-3個出る。種子は直径2-3cmのやや球形。表面は灰白色でコルク質、その内側は海綿状で海水によく浮き、海流によって分布を広げる(海流散布)。

沖縄に生えるタイワンハマオモトは、葉が長さ1m、幅7-12cmと大きい。花もより大きい。
花期:6-10月
分布:本(神奈川県以西)・四・九・沖
撮影:2016.6.30 神奈川県横須賀市
開花直前のハマオモト
花を包んでいた2個の総苞が開き始める。 2018.7.27 神奈川県横須賀市

ハマオモトの花
花は10-20個つく。 2016.6.30 神奈川県横須賀市

ハマオモトの花-2
花被片も雄しべも6個。 2016.6.30 神奈川県横須賀市

ハマオモトの果実
果実は海水に浮いて散布される。 2016.8.4 神奈川県横須賀市

ハマオモトの葉
葉は鱗茎から出て多肉な帯状で光沢があり、基部は鞘状に重なり偽茎となる。 2023.10.12 神奈川県三浦市


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