ヒメコウゾ(クワ科)[姫楮] |
名は、コウゾより小さいことからついたもの。コウゾは中国原産でヒメコウゾとカジノキの雑種といわれ、本州の中国地方、四国、九州で栽培され、一部が野生化している。雌雄異株で果実はほとんど結実しない。かつてはヒメコウゾもコウゾと同様に樹皮を和紙の原料にし、ヒメコウゾのこともコウゾとよんでいたが、江戸時代末期に雑種のものをコウゾ、元のものをヒメコウゾとよぶようになった。 丘陵~低山の林縁などに生える雌雄同株異花の落葉低木で、高さ2-5mになる。樹皮は褐色で狭楕円形の皮目が目立つ。よく分枝し、枝はややつる状に伸びて細く、若枝は緑褐色で軟毛が密生するが後に薄くなる。 葉は互生し、長さ4-10cm、幅2-5cmのゆがんだ卵形で2-5裂するものから分裂しないものまで変化が多い。若木や徒長枝につく葉が分裂することが多い。基部はゆがんだ円形で先は尾状にとがり、縁に先がやや鈍い鋸歯がある。質は薄く、表面は短毛が散生し、裏面は淡緑色で脈上に粗い毛が密生する。葉柄は短毛があり、長さ0.5-1.5cm。托葉は膜質、尾状にとがり長さ5-8mmの長楕円形~披針形ですぐ落ちる。 新枝の基部の葉腋に雄花序、新枝の上部の葉腋に雌花序をつける。花序の柄には密に短毛がある。雄花序は長さ1-1.5cmの柄があり直径約1cmの球形。雄花の花被片は4個、卵形で背面に軟毛がある。雄しべは4個。雌花序は柄が短く長さ5-6mm、直径約5mmの球形で赤紫色の糸状の花柱が目立つ。花柱は長さ約5mm、基部に2分岐して退化した一方の柱頭の名残の突起がある。花被片は合着して袋状となり子房を包む。 果実は直径1-1.5cmの球形の集合果で、6-8月に橙赤色に熟す。甘くて食べられるが、花柱が舌に残り食感がよくない。核は長さ2mmの卵形で淡褐色。 コウゾは雌雄異株でほとんど結実せず、雄花序は長楕円形。カジノキも雌雄異株で葉柄は長さ3-10cm。ヤマグワと葉が似るが、ヤマグワは鋸歯がヒメコウゾより大きく目立ち、葉柄は2-4cmある。 花期:4-5月 分布:本(秋田・岩手県以南)・四・九 撮影:2006.6.3 秋田市 |
雄花序。 2017.4.26 横浜市戸塚区 雌花序。 2021.4.6 川崎市多摩区 葉の表面。基部はゆがんだ円形で先は尾状にとがる。 2021.6.2 横浜市栄区 裏面は脈が目立ち、脈に粗い毛が密生する。 2021.6.2 横浜市栄区 葉形は多様で分裂するものも多い。 2022.6.20 横浜市金沢区 果実(集合果)。 2013.8.11 岩手県二戸市 果実は甘くて食べられるが、花柱が舌に残り食感がよくない。 2022.6.20 横浜市金沢区 樹皮は褐色で狭楕円形の皮目がある。 2021.6.7 横浜市金沢区 |
検索サイトからこのページへ直接お越しの場合は、 トップページへお回りいただきフレームを表示させてください。 |