ヒオウギ

ヒオウギ(アヤメ科)[檜扇]

名は葉の並び方が檜扇に似ていることからついた。檜扇とはヒノキの薄板を綴じ重ねて作った儀式用の扇のこと。漢名で「射干」といい、日本では誤ってシャガに当てられた。
分布が極限されて少ないが、人里近くに多いことから、古い時代に中国から渡来して野生化したとも考えられている。かつては1種だけでヒオウギ属とされていたが、現在はアヤメ属に合一されている。花が美しいので観賞用に栽培され、切り花や鉢栽培などに利用される。

山地や海岸の日当たりのよい草原に生え、茎は直立して高さ0.5-1.2mになる多年草。根茎は分枝し短くはう。
葉は長さ30-50cm、幅2-4cmの広剣状で先は長くとがる。2列に互生して扇形に並んで基部は茎を抱き、やや粉白を帯びる。暖地では葉が枯れずに越冬する。
高さ0.6-1mの花茎を出し、上部で2-3分枝して広披針形で膜質へら状の苞葉が数個つき、中から2-3個の花が出る。小花柄は長さ1-4cm。花は直径3-6cmの一日花。花被片は6個で内外片とも同形同大、狭長楕円形で鈍頭、橙色で内側に濃い暗赤色の斑点がある。雄しべは3個で内花被片の基部について花柱を囲んで立ち、花糸は細く、長さ約1.2cm、葯は黄橙色、長さ約1cmの線形で底着する。花柱は細くて直立し、上部のみ3裂する。
果実は長さ約3cmの広卵状楕円形の蒴果。果実が裂開しても種子が中軸胎座についたまま熟す。種子は直径約5mmの球形、強い光沢のある黒色で、「ぬばたま(野羽玉)」「うばたま(烏羽玉)」とよばれる。その深みのある黒さから、古来「黒」「夜」「髪」などに係る枕詞として使われた。根茎を射干(やかん、しゃかん)といって薬用として扁桃炎や去痰などに用いる。

園芸品に花色が赤いベニヒオウギ、黄色のキヒオウギ、矮性のダルマヒオウギなどがある。
花期:7-9月
分布:本・四・九・沖
撮影:2022.8.25 東京都八王子市
ヒオウギの花
花被片6個は同形、雄しべは3個。 2022.8.25 東京都八王子市

ヒオウギの葉
葉は広剣形で2列に互生して茎を抱く。 2022.8.24 横浜市南区

ヒオウギの果実
果実は長さ約3cmの広卵状楕円形の蒴果。 2022.8.24 横浜市南区

ヒオウギの種子
果実が裂開しても種子は中軸胎座についたまま熟す。 2022.10.26 横浜市南区

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