フクジュソウ(キンポウゲ科)[福寿草] |
名は、旧暦の元日頃に地上に姿を現すので、正月のめでたい福寿(幸福と長寿)の語をつけたもの。別の説として、花期の長いことが長寿に、黄金色の花が黄金に通じるとされたためについたという説もある。江戸時代初めにはすでに観賞用として栽培され、紅花、白花、八重咲きなどの園芸品種も多数あったという。現在の正月に鉢植えで飾られるものは、秋に花芽ができたものを加温栽培したもの。花期が早いので元日草といわれる。なお、奥羽(北東北)地方ではほぼどこでも「まんさく」とか「土まんさく」とよんできたことから、マンサク科のマンサク(奥羽地方では木まんさくとよぶ)の語源も「まず咲く」の転だと推測できる。 落葉樹林の明るい林床に生え、高さ10-30cmになる多年草。早春を代表する花で西日本には少ない。 根茎は黒褐色で太くて短く、ひげ根を多数出す。雪解け後、芽を包んでいた鱗片から花と葉を出し、開花後に茎が伸びて葉が広がる。茎は直立し葉鞘付近の断面はやや中実。 葉は長柄があり、ほぼ無毛で根生葉はない。下方の葉は葉身がなく、葉柄が広がって膜質の鞘となり茎を抱く。上方の葉は互生し、3-4回羽状複葉で裂片はさらに深裂し、終裂片は披針形。裏面にまばらな毛があるかまたは無毛。基部に羽裂する小さな托葉がある。 枝先に黄金色で直径3-4cmの花を1-6個つけ、上向きに咲く。萼片は卵形で5-8個あり、暗紫緑色を帯びる。花弁は長さ2cmほどの広倒披針形で10-30個あり平開する。花弁は初め萼片より短いが、開花後しばらく経った花では萼片と同長または僅かに長くなり、外側先端部が紫~紫黒色を帯びる。蜜腺はない。雄しべと雌しべは多数。 花は日が当たると開き、太陽を追いかけ、日が陰ると閉じる。パラボラアンテナのように開いた花は金属光沢があり、太陽から受けた光を花の中心に効率よく集め、温度を上げる。花の中心の温度は外気温より10℃ほども高くなるという。蜜をもたないフクジュソウが、虫の少ない寒い時期に虫を誘い込む絶妙な仕掛けである。というより、この仕掛けによって蜜が不要となったのかもしれない。 果実は長さ4-5mmの倒卵形の痩果が集まった集合果で、痩果には全体に短毛があり、かぎ状に曲がった短い花柱がある。5月下旬には結実して地上部は枯れる。 毒草であるが、全草に強心配糖体アドニンなどを含み、特に根は強心剤として利用される。 かつては環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類(VU)指定種であったが現在は指定外。とはいっても見かけると掘りたがる輩が多く、現在でも保護は必要。 なお、フクジュソウは、日本ではただ1種のみとされてきたが、近年、染色体数と外部形態の比較・再検討が行われ、現在ではフクジュソウのほかに、ミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウ、シコクフクジュソウの3種が加えられている。 ミチノクフクジュソウは本州と九州に分布し、花弁の外側先端部が赤褐色、萼片は花弁の1/2~1/3と明らかに短く、葉鞘付近の茎の断面は中空。 キタミフクジュソウは北海道東部、北部に分布し、常に1茎に1花のみつき、葉鞘付近の茎は中実で葉の裏面に毛が密生する。 四国と九州に分布するシコクフクジュソウは、葉鞘付近の茎は中空で花弁と萼片はほぼ同長、葉の裏面は無毛。 花期:2-4月 分布:北・本・四・九 撮影:2005.4.14 青森県五戸町 |
2009.4.12 岩手県久慈市 2009.4.12 岩手県久慈市 パラボラアンテナのように開いた花は、太陽から受けた光を花の中心に効率よく集め、温度を上げて虫を誘う。 2018.2.6 横浜市中区 上方の葉は互生し、3-4回羽状複葉で裂片はさらに深裂する。 2021.3.19 横浜市南区 果実は集合果。 2021.3.19 横浜市南区 |
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