イブキジャコウソウ

イブキジャコウソウ(シソ科)[伊吹麝香草]

名は、滋賀・岐阜県境にある伊吹山に多く、葉をもむとよい香りがすることからついた。ヒャクリコウ(百里香)ともいわれている。麝香がどんな香りかは知らないが、もむと確かにハッカのような強い香りがある。ヨーロッパ産のものは属名であるタイムとよばれ、ハーブとして栽培される。

山や海岸の崖地に生える小低木で、立ち上がっても15cmほどにしかならない。主に高山帯の岩地に群落をつくって生えるが、本州北端の下北半島や津軽半島では、海岸にほど近い崖地に生える。小さいので草のように見えるが木本であり、枝は細く、地面をはってよく分枝して広がる。枝には短毛がある。
葉は十字対生(交互に対生し、上から見ると十字に見える。)し長さ0.5-1cm、幅3-6mmの卵形~狭卵形で全縁、先は円く、両面に小さなくぼんだ腺点があってそこから芳香のある精油成分を放つ。脈は2-3対。
花は斜上した短枝の先に輪生し、萼は筒状鐘形の2唇形で長さ4-5mm、上唇は3裂、下唇は2裂して裂片は細く縁に毛があり、内面喉部に密に白色の長毛がある。花冠は2唇形で上唇は僅かに2裂して直立、下唇は3裂して開出する。花冠の長さが7-8mmの株と5-6mmの株がある。花の色は紅紫色~淡紅色で、標高の低いところに生えるものは一般に花の色が薄い。雄しべは4個で花冠から突き出て下の2個が長い。葯は2室。
果実は4分果で、分果はやや扁平で平滑、長さ約0.7mm。

まれに白花品もあり、シロバナイブキジャコウソウという。葉の表面に毛があるものをヒメヒャクリコウといい、北海道の一部地域と北アルプスに生育する。葉幅が狭く花がやや小さいものをイワジャコウソウというが、YListではイブキジャコウソウのシノニム扱いとなっている。
花期:6-8月
分布:北・本・九
撮影:2006.8.26 青森県北西部
イブキジャコウソウ-2
北アルプスで見たものは色鮮やか。 2008.8.3 長野県小谷村

イブキジャコウソウ-3
和名の基になった伊吹山で撮影。 2014.7.28 滋賀県米原市

イブキジャコウソウの葉
葉は十字対生し、先は円い。 2006.8.26 青森県北西部

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