カナムグラ

カナムグラ(アサ科)[鉄葎]

名は、茎が強靱でよく茂ることからついたもの。むぐらはやぶの意で、万葉集で「むぐら」、「やへむぐら」と詠まれたものはヤエムグラではなくカナムグラだろうと考えられている。旧分類体系ではカラハナソウ属はクワ科であったが、APG分類体系ではアサ科に含められた。

人里近くの道端や荒れ地などいたるところに生える雌雄異株でつる性の1年草。多量の花粉を出す風媒花で、花粉症の原因植物の一つ。茎や葉柄にある下向きの刺毛で他の木や草にS巻き(上から見て時計回り)に絡みついて3-4mも伸び、絡むものがないときははって地面を覆う。生長が速く、庭に生えてきたら気がついた時点で除草しておかないとあっという間に生い茂ってしまい、非常に始末が悪い。この刺はかなり痛く、遊び回っているうちに手足がミミズ腫れになったことがよくあって、子供の時には最も忌み嫌っていた草だった。
葉は対生し、葉柄は長さ3-15cm。葉身は基部は心形で長さ5-12cmで掌状に5-7深裂し、縁に低い鋸歯があり、裂片は基部の方へ狭まり先はとがる。表面に粗い毛があってざらつき、裏面には黄色の小腺点が散在する。
葉腋から葉の上に高く突き出た大きな円錐形の雄花序を出し、淡緑色の雄花をまばらにつける。花序の枝はほぼ水平に出る。雄花は細い柄があり、直径約3mmで花被は5全裂して開き、雄しべは5個。花糸は短く繊細で揺れやすくなっており、葯は細長く下垂する。雌花序は数個~十数個の苞が松毬状に集まって垂れ下がり、目立たない。苞は緑色、長さ0.7-1cmの卵円形で濃紫色の斑紋があり、先がとがり縁に粗い毛が多い。苞は花後に大きくなり、果期には紫褐色を帯びて先が反り返る。雌花は苞に隠れて外からは見えず、花被は子房に密接、花柱は2裂して毛が密に生え、花粉を捉える。
果実は長さ4-5mmのやや扁平な広卵形の痩果で花被に包まれる。上部に細毛があり、表面に腺がない。種子は1個。

全草を乾燥したものを葎草(りつそう)といって、健胃、利尿、解熱に用いる。生葉の汁液はタムシのかゆみ止めにする。欧米では日除けに利用する。
同属のカラハナソウは多年草。葉は卵円形でときに3中裂し、縁の鋸歯は大きい。
花期:8-10月
分布:日本全土
撮影:2002.9.29 青森県八戸市
カナムグラの雄花序
雄花序は立ち上がって円錐状になる。 2016.10.11 神奈川県三浦市

カナムグラの雌花序
雌花序は松毬状で目立たない。 2017.9.29 神奈川県横須賀市

カナムグラの雄花
雄花。細く短い花糸に葯をぶら下げて大量の花粉を風に飛ばす。 2017.8.28 横浜市緑区

カナムグラの雌花
雌花序の苞は縁に毛が多い。 2016.10.11 神奈川県三浦市

カナムグラの葉
葉は掌状に5-7裂し、両面ともざらつく。 2018.9.11 横浜市栄区

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