ケンポナシ

ケンポナシ(クロウメモドキ科)[玄圃梨]

名のケンポは、実の形が手に似た棒のことをいう手棒(テボウ)がテンボウ→ケンポと転じたものといわれる。ナシは果序軸がナシに似て甘く食べられることからついた。玄圃梨と書かれるが玄圃は当て字で、玄圃とは中国の崑崙山上にある仙人の住むところのこと。

山地の林内や谷沿い生える落葉高木で高さ15-25m、直径1mほどになる。樹皮は淡黒灰色で縦に短冊状に浅く裂け、しばしば薄片状に剥がれる。本年枝は暗紫褐色で光沢があり、無毛で小さな皮目がある。
葉は片側2回ずつ出るコクサギ形葉序とよばれる特殊な互生。葉身は長さ10-20cm、幅6-14cmの広卵形で縁に不揃いな先のとがった3角形の鋸歯があり、基部は切形~円形で先はとがる。質はやや薄く、両面とも無毛または脈上にまばらな毛がある。基部から出る3本の脈が裏面に突出して目立つ。葉柄は長さ2-6cmで葉柄上部と葉身基部に数対の腺体がある。
枝先や上部の葉腋に集散花序を出し、緑白色で直径約7mmの両性花を多数つける。萼片、花弁、雄しべ、は5個。雌しべは1個で花柱は3個。花序や萼片は無毛。
果実は3室、直径0.7-1cmの球形の核果で、9-10月に黒褐色に熟し表面は無毛。果柄は屈曲し肉質に肥大して、甘い味と香りがあって食べられる。核は黒褐色、直径4-5mmの扁平な円形。秋に果柄ごと木の下に落下して、地上の哺乳類に食べられて種子散布される。このように動物に食べてもらって種子を運ぶ方法を被食散布という。

果実と果序軸は利尿作用があり、乾燥したものを煎服すると二日酔いに効くという。材は床材、盆、文房具などに使われる。
花序や萼片、果実の表面に褐色の毛が密生するものをケケンポナシといい、本州中部地方と四国に分布し、西日本ではケンポナシよりはるかに多い。
花期:6-7月
分布:北(奥尻島)・本・四・九
撮影:2019.6.13 神奈川県藤沢市
ケンポナシの枝
黒っぽい小枝に緑白色の小さな花を多数つける。 2019.6.13 神奈川県藤沢市

ケンポナシの花
花弁、萼片、雄しべは5個。 2019.6.13 神奈川県藤沢市

ケンポナシの若葉
若葉。 2021.4.7 神奈川県藤沢市

ケンポナシの葉
葉は広卵形で基部から出る3脈が目立つ。 2019.7.8 神奈川県藤沢市

ケンポナシの葉序
片側2回ずつ葉を出すコクサギ形葉序とよばれる特殊な互生。 2019.5.31 神奈川県藤沢市

ケンポナシの若い果実
若い果実。表面は無毛。 2019.7.8 神奈川県藤沢市

ケンポナシの果柄と果実
肥大した花序の軸は甘く、食べられる。 2019.9.6 神奈川県藤沢市

落下したケンポナシの果柄と果実
果実は軸ごと木から落下。動物に食べられて種子散布される。 2018.11.8 横浜市戸塚区



ケンポナシの樹皮
樹皮は淡黒灰色で縦に短冊状に裂ける。 2019.5.16 横浜市戸塚区

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