ネナシカズラ

ネナシカズラ(ヒルガオ科)[根無葛]

つる性で、寄主に寄生根を差し込むとその下のつるや根が枯れてなくなり、まさに「根無し」になるのでこの名がある。
相手を選ばず絡みつき、容赦なく養分や水分を奪い取る。根は、発芽してから寄主(養分を吸い取られる相手)に絡みつくまでは存在するが、寄主を見つると必要がなくなるので枯れてなくなり、寄主に抱きついて突起(寄生根)を差し込み、養分を奪い取ってのうのうと生きていく。寄生植物にもいろいろあって控えめなものもあるが、これは100%他力本願のあこぎなパラサイト。「ひも」ということばはここからきたのかと思ってしまう。取りつかれた植物は衰弱して枯死することもある。葉は鱗片状に退化し、緑色の葉をもち合わせていないという徹底ぶり。
寄生に適した植物が見つからないときはネナシカズラ同士で共食いし、お互いの茎に寄生根を差し込む。
新エングラー体系ではヒルガオ科であったものがクロンキスト体系ではネナシカズラ科とされ、APGでは再びヒルガオ科に帰ってきた。

葉緑がない完全寄生植物。日当たりのよい山野で、他の植物の養分を吸い取って生きるつる性の1年草。茎は2-6mに伸び、無毛で太さ約1.5mmの針金状、紫褐色を帯びる。つるは他物や寄主にZ巻き(上から見て反時計回り)に絡みつく。
葉は退化して長さ2mm以下の3角形の鱗片状。
つるのところどころから短い花序を出し、淡黄白色の花をやや穂状に密集してつける。苞はない。萼は小さく、裂片は長さ約1mmで円頭。花冠は長さ3.5-4mmの鐘形で先は浅く5裂する。内面の基部に5個の鱗片がある。雄しべは5個で短く、花筒につき、葯は橙赤色。子房は上位で2室、花柱は合着して1個に見え、長さ約1.5mm、先は短く2裂する。
果実は長さ約4mmの楕円状球形の蒴果。初め花冠をかぶっているが後に花冠が落ちて裸出し、基部で横裂する。種子は2-3個でき、灰褐色で直径2.5-3mmの広卵形。

茎を乾燥したものを菟糸(とし)、種子を乾燥させたものは菟糸子(としし)といい、強精・滋養強壮に用いる。
最近は帰化種で花序が穂状にならないアメリカネナシカズラも多くなってきている。仲間としてはツルマメなどにつくマメダオシ、海岸植物のハマゴウなどにつくハマネナシカズラがある。
花期:8-10月
分布:日本全土
撮影:2002.9.1 青森県十和田市

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