ヤハズエンドウ(マメ科)[矢筈豌豆] |
名は、小葉の先は矢筈状にへこむことからついたもの。別名カラスノエンドウ(烏野豌豆)とよばれ、その由来は、実がカラスに似て黒いからとも、実が人間が食べるエンドウより小さく、同属のスズメノエンドウよりも大きいからともいわれる。この別名のほうが一般になじみ深い。 日当たりのよい道端や草地など普通に見られるつる性の1年草または越年草。寒冷地では1年草となる。茎は有毛で4稜があり、根元から分枝してつる状に長く伸び、高さ50-90cm、長さは0.5-1.5mになる。 葉は互生し偶数羽状複葉で、小葉は無柄で3-8対あり、長さ2-3cm、幅4-5mmの狭倒卵形でふつう先が矢筈形にへこむ。先はふつう3分枝する巻きひげとなり、他の草などに絡みついて伸び上がる。巻きひげは先端部の小葉が変化したものと考えられている。托葉は草質で2深裂し、中央部に黒っぽい蜜腺(花外蜜腺)が1個あり、よくアリがへばりついている。茎や葉を食い荒らす害虫から蜜と引き換えに守ってもらっているという話があるが、遠い過去にはそうだったのかもしれない。しかし今ではアブラムシに対しては守ってくれていないどころか、そちらにべったりのように見える。人知の及ばない何かの駆け引きがあるのかもしれない。 葉腋に紅紫色で長さ1.2-1.8cmの蝶形花を1-3個ずつつける。鮮やかな紅紫色のマメ科特有の蝶形花はよく目立ち、雑草扱いされているがその美しさは捨てがたいものがある。萼は長さ0.8-1.5cm、萼裂片は5個、長さ3-7mmの広線形で萼筒より短い。雄しべは10個で2体。花柱は円柱状で長い毛がある。 花後に細長い豆果をつくり、乾燥すると2枚の果皮がそれぞれ逆向きにねじれて中の種子を音を立てて遠くへはじき飛ばす。これを「豆鉄砲」という、かどうかは知らない。こうして自らは夏までに枯れてしまう。豆果は斜上してつき、長さ3-5cm、幅5-6mmの扁平な広線形で無毛、先は上向きに曲がって鋭くとがり、黒く熟して裂開する。種子は茶褐色で黒斑があってふつう5-10個入っている。若い豆果は食用になるし、若芽は山菜としてナンテンハギなどの同様にさまざま利用される。 まれに白花も見られ、シロバナヤハズエンドウという。小葉が細く先がとがるものはホソバヤハズエンドウ、巻きひげを欠くものをツルナシヤハズエンドウという。ヨーロッパ原産で緑肥として輸入されたオオヤハズエンドウ(ザートヴィッケ)は、ときに逸出しており、全体に多毛で大きく、花は長さ2-3cm、豆果も長さ5-8cm。 花期:3-6月 分布:本・四・九・沖 撮影:2008.4.28 山梨県都留市 |
鮮やかな紅紫色の花は捨てがたい魅力がある。 2006.3.27 東京都小金井市 巻きひげは小葉が変化したもの。 2019.3.28 神奈川県三浦市 若い豆果。 2016.4.20 神奈川県三浦市 熟すとカラスのように黒くなり、先は曲がって鋭くとがる。このあと、種皮がねじれて種子をはじき飛ばす。 2019.5.16 川崎市麻生区 |
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