ヤナギラン(アカバナ科)[柳蘭] |
細長い葉をヤナギに、花をランにたとえてこの名がある。 英名でFireweed(火の草)というように、山火事や伐採の跡などの裸地にいち早く侵入するパイオニア的植物で、環境の似たスキー場や牧草地などにもよく群落をつくる。外来植物ではダンドボロギクなどが同じような性質をもつ。園芸植物のようなあでやかさがあり、夏の高原を彩る花の一つとして登山者にも人気がある。八甲田山麓の田代平では、7月半ば頃に野生の花とは思えないような鮮やかな紅紫色のお花畑が突然出現していたが、長く同じところにとどまる花ではないので今はないのかもしれない。 山地帯~亜高山帯に生え、茎は分枝せずに直立し、高さ0.5-1.5mになる多年草。根茎は太く、長く伸びて群生する。 葉はほぼ無柄で多数が互生し、長さ6-15cm、幅1-2.5cmの長披針形。茎の中部の葉が大きく、下部の葉は花時には枯れる。先はとがり、縁にまばらな突起状の鋸歯があるが目立たない。両面無毛で裏面は粉白を帯びる。 茎頂の長さ10-50cmの総状花序に多数の紅紫色の花をつけ、下から上に向かって順に咲き上がっていく。花は直径3-4cm、花弁は4個、長さ1-1.5cmの倒卵形で先は円く短い爪がある。萼片は長さ1.5cmの線形で4個、外面に屈毛が生え、花とともに落ちる。苞は長さ3-5mmの線形。雄しべは8個で長短があり、雌しべより先に熟して花粉を出す。雌しべは1個で初め曲がっているが雄しべの葯が裂開したときに直立し、後に4裂して反り返る。花柄には白い伏毛がある。 果実は夏の終わりに結実する長さ4-10cmの蒴果で縦に4裂する。種子は褐色で長さ1mmほど、銀色の綿毛を輝かせながら風に乗って運ばれる。 葉の脈に毛があり、中部地方~東北地方にかけて分布するものを亜種ウスゲヤナギランといい、北海道~東北地方に分布するヤナギランと区別する見解もある。八重咲きのものもあり、ヤエザキヤナギランという。 ヤナギランに似て、高さは低く4-30cmで花が大きく色鮮やかなヒメヤナギラン(キタダケヤナギラン)は日本には自生しないものとされていたが、昭和61年(1986年)に北岳で発見された。葯が裂開する前から花柱は反り返っている。 花期:7-9月 分布:北・本(中部地方以北) 撮影:2001.7.15 青森市 |
スキー場や牧草地で群落をつくるが、永続性はない。 2001.7.15 青森市 南アルプス夜叉神峠で。茎の中部の葉が大きい。 2000.7.29 山梨県芦安村 |
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