ヤツシロソウ

ヤツシロソウ(キキョウ科)[八代草]

名は、発見場所がたまたま熊本県八代市だったことからついたものというが、異説もある。八代市では市民の花に指定しているが、もともと阿蘇外輪山などがこの植物の主な分布地であり、そこから遠く離れた八代市ではもはや野生でこの花を見ることはできない。大陸と地続きだった頃に南下した遺存植物とされており、個体数は極めて少ない。環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類。
ヨーロッパ産の基準変種が園芸用にカンパニュラ(ホタルブクロ属のこと)またはカンパニュラ・グロメラータ、リンドウ咲きカンパニュラなどの名で流通している。

阿蘇外輪山の草原の湿地にまれに見られる多年草で、茎は直立して高さ40-80cmになる。全体に粗い毛が生える。
葉は互生し、根生葉は花時にはない。茎葉は長さ5-10cmの広披針形~狭卵形で縁に不揃いの細鋸歯がある。先は次第にとがり、基部は円形~くさび形。下部のものは有柄で上部のものは無柄。
茎の先や上部の葉腋に10個ほどの花をやや頭状につける。花柄はごく短いか、ない。萼は5裂し、裂片は3角状線形~線状披針形。花冠は紫色、長さ2-2.5cmの漏斗形で、上向きに咲く。花冠の先は5裂して裂片の先はとがる。雄しべは5個で花冠裂片と互生する。花は雄性先熟で、蕾のときに花粉を出し始め、開花後に雌しべの柱頭が3裂する。
果実は蒴果で熟すと裂開して小さな楕円形の種子を多数出す。

同属のホタルブクロは花は白色~淡紅紫色の筒状鐘形で短い花柄があり、下向きに咲く。
花期:8-9月
分布:九(熊本・大分県)
撮影:2019.6.5 神奈川県箱根町(植栽)
ヤツシロソウ-2
花は雄性先熟で、蕾のときから雄しべは花粉を出し、開花後に雌しべの柱頭が3裂する。 2019.6.5 神奈川県箱根町


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