ヨシ(イネ科)[葦・蘆・葭] |
本来はアシといったが、アシは「悪し」に通じることから対語のヨシが使われるようになったもの。アシの由来は、①ハシ(初め)の意。古事記の天地開闢神話で初めて現れた神をウマシアシカビヒコヂノ神といい、作り出された国土を「豊葦原瑞穂国」といったことによる②稈(はし)の転(hの音が抜けたもの)という③青之(あおし)の転(和漢三才図会)④浅(アサ)の転。浅いところに生えることから⑤いまだ田にされていないという意味のアラシ(荒)の転、等々諸説あるが定説はない。別名ハマオギ、キタヨシという。 池沼や川岸、低層湿原、放棄水田などに普通に生える大型の多年草。茎は円柱形で中空、分枝ぜずに高さ1.5-3mになる。太くて長い根茎は泥中をはって伸び、節から根を出して大群落をつくる。地上をはう匐枝はない。 葉は灰緑色で硬く、長さ20-50cm、幅2-4cmの線形で2列に互生し、縁はざらつき先は次第に鋭くとがり先は垂れる。葉鞘は緑色で口部に白毛が生える。葉はしばしば片側に寄り、これを「片葉の葦」という。 花序は長さ15-40cmの大型の円錐状で片側に偏って垂れ、小穂は有柄で枝先に多数つき淡紫色、長さ1.2-1.7cm、2-4個の小花からなる。最下の小花は雄性で基部は無毛、残りの小花は両性で基部に長毛がある。苞穎は護穎より短く、第1苞穎の長さはその上の第1小花の護穎の1/2以下。護穎には膜質で3脈があり背面は無毛、先は内巻してとがる。 茎は葦簀(よしず)や簾(すだれ)の材料となる。ススキよりも耐久性があるので屋根葺きの原料にもされる。根茎を干したものは漢方で蘆根(ろこん)といい、利尿、解毒、止血などに用いる。春先の新芽は山菜として利用される。近年は水辺の水質保全のために保護、植栽されている。 ヨシの大群落を特に「ヨシ原」といい、水辺や湿地に棲むさまざまな生き物を育んでいる。 図鑑としては余談となるが、かつて武蔵野は一面にヨシが生えるヨシ原だったという。元和3年に江戸市中に散在していた遊女屋を葺屋町(現在の中央区日本橋掘留町付近)に集めた際、周りがヨシ原だったため、葭原と俗称されていた。ここは後に吉原と改称され、明暦の大火後に浅草山谷(現在の台東区千束)に移された。その後、激動の?歴史を経て、昭和41年(1966年)の住居表示実施によって地名としてのヨシ原は消滅した。 よく似たツルヨシは河岸に生え、高さ1.5-2mで地表をはう匐枝で殖える。第一苞穎は第一小花の護穎の1/2以上。セイタカヨシ(セイコノヨシ)は似ているが高さが4mに達する。 花期:8-10月 分布:日本全土 撮影:2005.10.11 青森県三沢市 |
2019.10.10 神奈川県三浦市 葉鞘口部に白毛が生える。 2022.8.16 神奈川県藤沢市 |
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