ダンコウバイ(クスノキ科)[檀香梅] |
名の「檀香」はビャクダンの漢名で、一般に芳香のある木材のことをいい、本種も材に芳香があることから名付けられたもの。本来はロウバイの1品種につけられた名であったが、明治時代に博物学者の田中芳男がその名を転用し、以降この名で広まった。別名ウコンバナ、シロヂシャという。 山地の落葉樹林内や林縁に自生し、太めの枝をまばらに分け高さ3-6mになる雌雄異株の落葉低木~小高木。 樹皮は暗灰色で平滑、円形~長楕円形の皮目がある。若枝は初め緑色で長い軟毛が密生するが、次第に落ちて灰黄褐色になる。冬芽は楕円形で鈍頭。頂芽はない。 葉は互生し、長さ5-15cm、幅4-13cmの広卵形で全縁、基部は切形~浅い心形、先はふつう浅く3裂し、裂片は鈍頭、基部から裂片の先に向かって3個の脈が伸びる。枝の基部近くにつく葉は先が切れ込まないものがある。質はやや厚く、表面は鮮緑色で初め黄褐色の軟毛があるが後に無毛、裏面は帯緑白色で初め淡黄褐色の長毛が密生するが、後に脈上と脈腋を残して落ちる。葉柄は長さ1-4cm。秋には美しく黄葉する。 葉の展開に先立って、前年の葉腋から出る短枝に1-3個の散形花序がつき、芳香のある小さな鮮黄色の花をまとめてつける。花序には柄がなく、雄花序が雌花序より大きい。雄花序には6-7個の雄花がつき、花柄は長さ1.2-1.5cmで淡褐色の長軟毛が密生する。花被片は6個で長さ3.5mmの楕円形。雄しべは9個で3輪に並び、葯は内向し2室。内輪の3個の雄しべの花糸の中ほどに柄のある腺体が2個つく。雌しべは退化して小さい。雌花序は5-6個の雌花がつき、花柄に密毛がある。花被片は6個で長さ2.5mmと雄花より小さい。退化して葯のない仮雄しべが9個ある。内輪の3個の仮雄しべの花糸の中ほどに柄のある腺体が2個つく。雌しべは長さ3mmで柱頭は盤状。 果実は直径7-8mmの球形の液果で、9-10月に赤色から紫黒色に熟す。果柄は長さ1.5-2cmで先端はやや太くなる。種子は淡褐色~褐色の球形、基部はやや突出する。 材は芳香があり、楊枝や細工物に使われる。 よく似たアブラチャンはダンコウバイより枝が細く、若枝は赤褐色。花序に明らかな柄があり、花はやや緑がかった黄色、葉は切れ込まない。果実は直径約1.5cmと大きく、熟すと不規則に裂ける。シロモジもよく似ているが、分布は中部地方以西、葉の先は3裂するが裂片の先はとがり、花は垂れ下がって咲く。果実は黄緑色。 花期:3-4月 分布:本(福島県以南)・四・九 撮影:2018.3.15 神奈川県横須賀市 |
2018.3.15 神奈川県横須賀市 花序に柄はなく、花柄に長軟毛が密生する。 2018.3.15 神奈川県横須賀市 雄花。雄しべが目立ち、雌しべは小さい。 2018.3.15 神奈川県横須賀市 雌花。目立つ花柱がある。 2021.3.10 川崎市多摩区 葉は広卵形で先はふつう浅く3裂する。 2022.5.18 神奈川県秦野市 果実は紫黒色に熟す。 2021.10.7 川崎市多摩区 樹皮は暗灰色で円形の皮目が多い。 2018.3.15 神奈川県横須賀市 |
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