エノキ(アサ科)[榎] |
名の由来は、実を鳥が好んで食べられたことから「餌の木」、枝がよく茂るので「枝の木」、器具の柄に適するので「柄の木」、道祖神(さえのかみ)の木の意味で「塞ノ木」の「サ」が略されたもの、など諸説ある。「榎」は和字で、道のほとりの大樹が夏の強い日差しをしのぐことからできたもの。 エノキ属は旧分類体系ではニレ科であったが、APG分類ではムクノキ属などとともにアサ科に移された。 山地や丘陵、沿海地の日当たりのよい適湿地に普通に生える雌雄同株の落葉高木で、幹は直立して高さ7-20mになる。分布北限は青森県の日本海側南部。よく枝を分け、横に大きく広がった丸い樹形となる。庭木や公園樹として植栽されている。樹皮は灰褐色~灰黒褐色、斑点状の皮目があってざらつくが割れ目はない。若枝は褐色の微毛がある。 葉は互生し、やや厚くてざらつき、長さ4-9cm、幅2.5-6cmの広卵形~楕円形、基部は広いくさび形で左右非相称、先は急に鋭くとがる。縁の上半部に鈍鋸歯があるかまたは全縁。表面は光沢のある暗緑色で無毛、裏面は淡緑色。主脈と基部から伸びる2本の支脈が目立ち、側脈は3-4対で鋸歯の先には達しない。幼木では基部から1/3を除き鋸歯がある。若葉は両面にさび色の短い縮毛がある。葉柄は長さ0.3-1cmで上面に溝があり、軟毛が密生する。 葉の展開と同時に淡黄褐色の花が開く。雄花は新枝の下部に集散花序をつくり、両性花は新枝の上部の葉腋に1-3個つく。雄花は花被片は4個、長楕円状披針形で4個の雄しべと対生する。花糸は淡紫色。花の中央に白い綿毛が密生する。両性花は花被片は4個、雄しべは4個、雌しべは1個で子房は上位、花柱は2裂し、柱頭に白い綿毛が密生する。 果実は直径6-8mmの球形~広楕円形の核果で9-10月に橙色に熟す。果柄は長さ0.5-1.5cm。果肉は少し甘みがあり、干し柿に似た味がする。核の表面に網状紋がある。 昔はよく一里塚に植えられたり、村境にも目標樹として植えられたので各地に大木が残っている。エゾエノキとともに国蝶オオムラサキの幼虫の食樹。 エゾエノキは北海道~九州に分布し、葉の基部を除いて鋭い鋸歯があり、果実は黒熟する。ムクノキは雰囲気が似ているが、葉は左右相称で鋸歯は基部まであり、側脈は鋸歯の先まで達する。果実は2-3個が房状について黒熟する。ケヤキは側脈が鋸歯の先まで達し、分岐しない。果実は暗褐色に熟す。 花期:4-5月 分布:本・四・九・沖 撮影:2017.4.20 神奈川県横須賀市 |
葉の展開と同時に花が咲くが、目立たない。 2020.3.31 横浜市中区 雄花。4個の雄しべがある。 2017.4.20 神奈川県横須賀市 両性花。花柱は2裂し、柱頭に白い綿毛が密生する。 2023.3.29 神奈川県平塚市 葉はつやがあり、左右非相称。基部から伸びた3脈が目立つ。 2017.6.6 神奈川県三浦市 若い果実。 2022.6.17 神奈川県茅ヶ崎市 果実は黄色を経て赤褐色に熟す。 2019.9.17 神奈川県平塚市 樹皮は灰褐色で皮目があってざらつくが裂けない。 2019.2.7 横浜市南区 |
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