ヒシ(ミソハギ科)[菱] |
名は、果実または葉が拉げた(ひしゃげた)形をしていることからついたといわれる。葉の形は完全な菱形ではないが、「菱形」という言葉は、この葉の形が語源となっている。水面を覆い尽くすほど殖えて広がるが、葉は重なり合わず、その絶妙な葉形と配置は見事というほかない。 旧分類では1属1科のヒシ科で近縁のアカバナ科に含められることもあったが、APG分類体系ではミソハギ科に合一された。 池や沼一面に群生する1年生の水草。前年に泥中に落ちた果実から細い茎を出し、水中の節から地中に羽状に分裂した根を下ろす。 葉は互生し、浮水葉は放射状に密生して水面に浮かび、直径3-6cmの3角状菱形で表面は無毛で光沢があり、上部の縁には3角状の鋸歯がある。裏面や葉柄には毛があり、葉柄は長さ5-10cmと長く、中央部は中空で紡錘状に膨らんで浮き袋の役目をしているが、水面を漂う根なし草ではなく、根は土中に定着している。浮水葉は水面が混み合ってくると空中に葉身を伸ばして抽水葉状態になってくる。沈水葉は糸状に深裂する。 葉腋から1-2本の花柄を伸ばし水上に小さな花をつける。花は直径約1cmで白色ときに淡紅色を帯び、花弁は4個、楕円状倒卵形で2浅裂し、濡れると半透明になる。雄しべも4個。子房は2室で1室のみ成熟し、基部は萼筒に合着する。花柱は1個。萼は短い筒部と毛のある4個の萼裂片からなり、うち2裂片は花後に残存して果実の刺となる。 果実は水中にあり、幅3-5cmのやや平らな倒3角形の核果で、多肉な果皮は早くしおれ、骨質の内果皮が残り、熟すと茎から分離して水面に浮いてくる。左右の両端が4個の萼片のうち2個が変化した刺となり、刺の先に小さな下向きの刺がつく。中の子葉は、かつては重要な食料として利用された。ゆでて食べると、クリのようにほくほくしてなかなかうまいのだという。忍者が使った撒き菱の原型はヒシの実だといわれている。 4個の萼片全部が刺となり葉柄が赤みを帯びるものをメビシというが、YListではオニビシの別名としている。葉柄や葉が緑色のものをオニビシといい、本州と九州にある。ヒメビシは全体に小さく、浮水葉は直径1-2cmで裏面はほぼ無毛、果実の刺は4個。 花期:7-10月 分布:北・本・四・九 撮影:2004.8.8 宮城県涌谷町 |
花弁も雄しべも4個。 2004.7.25 青森県三沢市 |
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