イヌノフグリ(オオバコ科)[犬の陰嚢] |
名は果実の形が犬のふぐり(陰嚢)に似ていることからついたもの。属名のVeronicaは、ゴルゴダ刑場に向かうキリストに額の汗を拭き取る布を差し出した聖女の名前に由来する。 昔はどこでも普通に生えていたといい、砂利の多い畑にもよくあったようで、ハタケクワガタという地方名も残っている。クワガタソウ属の植物は、今では帰化植物であるオオイヌノフグリやタチイヌノフグリばかりが目につき、在来の本種を見ることはかなり難しくなり、希少種とされるほどになってしまった。しかし石灰岩地とは相性がよく、石灰岩が露出している地域では今でも普通に見つけられるという。開花はこれらの帰化種よりも先で、早ければ1月下旬から咲き出す。環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類(VU)。 海岸付近の岩礫地、山間部の土手や石垣の隙間、舗装道路の割れ目などに生える越年草。茎は毛が散生し、下部で多く分枝して地をはって広がり、直径5-20cmの株になる。 葉は短い柄があり、下部では対生、上部では互生する。長さ幅とも0.4-1.1cmの卵円形で2-3対の先の鈍い鋸歯があり、両面に毛が散生する。花時にも葉面が紫褐色を帯びているものが多い。 茎の上部の葉腋に直径3-4mmの花を1個つける。葉に埋もれるように咲くので目立たず、午前中の早い時間だと閉じていて見られないことが多いので、午後1時頃が狙い目か。花柄は長さ3-7mmで曲がった毛が生える。萼は長さ3-4mmで4深裂する。花冠は皿形で基部近くまで4裂し、淡紅白色で紅紫色の筋がある。雄しべは2個、子房は扁球形。 果実は長さ2.5-3mm、幅4-5mmの球形の蒴果で中央がくびれ、上部両端は円い。全面に毛がある。1果に10個ほどの種子を入れる。種子は長さ1.2-1.5mm、幅1mmの広卵形で淡褐色、背面にしわがある。 オオイヌノフグリは花の直径が0.8-1cmと大きく、色は鮮やかな青紫色。葉は3-5対の鋸歯がある。果実の上部両端はややとがる。タチイヌノフグリは基部がはうが、すぐ直立する。花柄はなく、花は直径3-4mmで青紫色。フラサバソウは花が淡青紫色で直径4-5mm。葉の鋸歯は1-2対。果実は無毛。コゴメイヌノフグリは花は直径5mmほどで白色、全体に毛が多い。 花期:2-4月 分布:本・四・九・沖 撮影:2024.1.31 東京都八王子市 |
正午頃に撮影。平開するまでにはまだ30分ほどかかりそう。 2024.1.31 東京都八王子市 花は葉に埋もれるように咲くので、目立たない。 2024.1.31 東京都八王子市 オオイヌノフグリの青紫色と違って、淡紅白色。直径3-4mm。雄しべは2個。 2024.1.31 東京都八王子市 葉の鋸歯は2-3対。両面に毛が散生する。 2024.1.31 東京都八王子市 短い葉柄がある。 2024.1.31 東京都八王子市 |
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