オオイヌノフグリ(オオバコ科)[大犬の陰嚢] |
名は、在来のイヌノフグリに似ていて全体に大型であることからついたもの。イヌノフグリの名は実の形が雄犬の陰嚢(ふぐり)に似ていることからついた。属名のVeronicaは、ゴルゴダ刑場に向かうキリストに額の汗を拭き取る布を差し出した聖女の名前。俳句では「いぬふぐり」と詠むようだが、字数の関係なのだろう。 従来の分類でゴマノハグサ科であったクワガタソウ属は、APG分類ではオオバコ科に移された。 早春のまだ風の冷たい日だまりでヒメオドリコソウとともに生えており、澄んだブルーの花を咲かせる。繁殖力は旺盛であるが、全くの都会には生えず、かといって人の臭いのしないところにも生えない。西アジア・中近東原産の帰化植物で、明治17年(1884年)に東京上野で牧野富太郎に気づかれ、今では違和感なくすっかり日本の風景に溶け込んでいる。この花が盛りを過ぎる頃、花のサイズが半分ほどのタチイヌノフグリが咲き始める。最近はこちらの方も元気がいいようだ。 秋に発芽して翌年の春に花が咲いて初夏には枯れる越年草。全体に軟毛が多く、茎はよく分枝して横に広がって長さ10-40cmになり、上部が斜上して高さ5-10cmになる。平地の道端や人家周り、農耕地などに生える。 葉は最初は対生で花がつくと互生になるので、茎の下部の1-2対が対生、中部以上で互生という形になる。葉身は長さ0.6-2cm、幅0.4-1.5cmの卵形~卵円形で縁に低く大きな鋸歯が3-5対あり、先は円くて先端がとがり基部は切形。両面に軟毛が散生する。葉柄は長さ1-6mm。 茎の上部の葉腋から白毛のある長さ1-4cmの花柄を葉より上に出し、鮮やかな青紫色の皿形の花を1個つける。萼は長さ5-6mmでほとんど基部まで4裂し、萼裂片は卵形で縁に白毛があり、先はややとがる。萼は花後も残って果実を抱く。花冠は直径0.8-1cmで日が当たって気温が上がってくると開き、昆虫によって受粉すると抜け落ちる。昆虫による受粉ができないときは、花が閉じる前に雄しべが雌しべの方に曲がって葯が柱頭に触れて同花受粉する。花冠は不均等に4深裂し、裂片には蜜のありかを示す放射状の濃青色の筋があって下の裂片が小さく色も薄い。雄しべは2個で花冠とほぼ同長、葯は2室で平行して花糸につき、縦に裂ける。子房は扁球形で2室、雌しべは1個。 果実は長さ4mm、幅6-7mmのやや扁平で幅広な倒心臓形の蒴果で縁に長い毛がある。熟すと2裂して8-15個の黒色の種子を散らす。種子は長さ1-1.5mm、腹面は中央がくぼんだ舟形で背面に深い横しわがある。 在来のイヌノフグリは環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)。花は淡紅紫色で直径2-4mm。山村の民家の石垣などで見られるがごく少ない。 花期:11-5月 分布:帰化植物 撮影:2002.4.7 青森県名川町 |
明治初期に入ってきた新参者だが、日本の春景色にすっかりなじんだようだ。 2002.4.7 青森県名川町 雄しべは2個。昆虫による受粉ができなければ雌しべの方に曲がり同花受粉する。 2010.3.12 東京都文京区 耕起前の田のあぜに群れ咲いていた。 2018.2.28 神奈川県茅ヶ崎市 春早い時期にはまれにイヌノフグリのような淡紅紫色の花をつけることがあるが、花冠の大きさが全然違う。 2010.3.12 東京都文京区 葉は卵形~卵円形で縁に低く大きな鋸歯が3-5対ある。 2021.3.23 横浜市中区 犬の陰嚢(ふぐり)に似た果実。 2021.3.26 横浜市中区 茎はよく分枝して地をはい、長く伸びる。 2021.3.24 神奈川県二宮町 |
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