カクレミノ

カクレミノ(ウコギ科)[隠蓑]

名の由来は、3裂した葉の形を、鬼や天狗が持っている身につけると相手に自分の姿が見えなくなるという空想上の蓑にたとえたもの。

湿り気の多い照葉樹林内に生える雌雄同株の常緑小高木~高木で幹は直立して高さ5-7m、大きなものは15mになって樹形は逆3角形状になる。樹皮は灰白色~淡褐色で平滑、小さな円い皮目がある。本年枝は緑色。耐潮性があり、沿海地に多い。
葉は長さ2-15cmの柄があって枝先に集まって輪生状に互生し、若い木では卵円形で先が3-5深裂するが、成木や花のつく枝ではほぼ分裂せず、長さ7-15cm、幅4-9cmの菱状広卵形~卵状楕円形だがときに2-3裂するものも混じる。基部は広いくさび形で先は短くとがり、縁は全縁でやや波打つ。革質で厚く、両面とも無毛。表面は濃緑色で光沢があり、基部から伸びる3脈が目立ち、裏面は淡緑色で脈間に小さな円い腺点がある。下部の古い葉は秋から冬に黄色~橙色に色づき、春には落葉して上部の新葉と入れ替わる。
枝先に球状の散形花序を1-3個出し、淡黄緑色で直径4-5mmの花を15-40個つける。花には香りがある。花柄は長さ3-4cm、小花柄は0.6-1.5cm。両性花だけの花序と雄花と両性花が混生する花序がある。萼は鐘形で先は不規則な5歯がある。花弁は5個で長さ約2mmの卵形。雄しべと花柱は5個。花柱は合生し、長さ約2mmで果時まで宿存する。
果実は長さ0.7-1cmの広楕円形の液果で、10-11月に粉白を帯びた紫黒色に熟す。種子は長さ6-7mmのゆがんだ長楕円形で2-5個入っている。果実を小鳥、特にヒヨドリが好み、分布の拡大は小鳥による被食散布に依っているらしい。

斑入り葉の品種もあって庭園、公園でよく植栽され、耐潮性のほか耐陰性もあるのでヤツデとともに住宅の日当たりの良くない庭に植栽される。樹皮に傷をつけて出た黄褐色の樹液を黄漆といって家具などの塗料に用いる。
シロモジは葉が分裂してよく似ているが、落葉樹で質は薄い。キヅタは同じウコギ科で、葉が厚く分裂するところはよく似るが、つる性で気根を出して木をはい登る。
花期:6-8月
分布:本(関東地方南部以西)・四・九・沖
撮影:2019.8.1 横浜市中区
カクレミノ-2
逆3角形の樹形になる。 2019.11.6 横浜市中区

カクレミノの花序
花序。両性花に雄性花が混じる。 2019.8.1 横浜市中区

カクレミノの雌花
両性花。 2019.8.1 横浜市中区

カクレミノの葉
3裂した葉を「隠れ蓑」にたとえた。 2019.8.1 横浜市中区

カクレミノの葉-2
不分裂葉に分裂葉が混じる。 2019.11.6 横浜市中区

カクレミノの葉-3
下部の古い葉は秋から冬に黄色~橙色に色づき、春には落葉して上部の新葉と入れ替わる。 2020.4.30 横浜市中区

カクレミノの果実
果実は紫黒色に熟し、やや粉白色を帯びる。 2018.11.7 横浜市中区

カクレミノの樹皮
樹皮は平滑で白っぽい。 2017.4.5 神奈川県鎌倉市


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