カラタチバナ

カラタチバナ(サクラソウ科)[唐橘]

名の由来は、ミカン科のタチバナと似た花をつけ、中国渡来の植物と誤認して「唐」を冠したもの。別名ヒャクリョウ(百両)といわれ、その由来は本草綱目にある「百両金」という植物が日本では本種に相当すると考えたからとも、江戸時代の文化・文政時代のブームの最盛期に、投機の対象として数百両で取引きされたからともいわれる。明治時代には百を超える園芸品種があったというが今は少ない。
古典園芸植物の代表であり、本種(百両)より実が多くつくのでセンリョウ(千両)、センリョウよりさらに多くの実をつけるのでマンリョウ(万両)の名がついた。なお、ジュウリョウ(十両)とよばれるのは同属のヤブコウジで、こちらは明治時代の中頃にブームの最盛期があった。イチリョウ(一両)はアリドオシ。結実する実の多い順に万両、千両、百両、十両、一両とよばれ、全て縁起物となっている。

マンリョウと同様、暖地の常緑林内に生える常緑小低木だが個体数はずっと少ない。茎(幹)は茶褐色で直立し、枝を分けず高さ0.2-1mになる。匍匐枝は出さない。若い茎の上部や花序の上方に微細な粒状毛がある。
葉は互生し質が厚く両面とも無毛、表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色。長さ8-20cm、幅1.5-4cmの披針形~狭卵形で先は次第に細くなり突端はやや鈍頭、基部は狭いくさび形、縁にごく低い波状の鋸歯があるが不明瞭でほぼ全縁に見える。鋸歯の間に内腺点がある。葉柄は長さ0.5-1cm。
葉腋や鱗片葉の腋から長さ3-6cmの花序を斜上し、白色の花を下向きに10個ほど散形状につける。小花柄は長さ約1cm。萼は5裂し、萼裂片は無毛、狭長楕円形で鈍頭。花冠は直径7-8mmで外面に腺点があって5深裂し、裂片は卵状楕円形で鋭頭、外側に反る。雄しべは5個で花筒の基部につき、葯は内向する。子房は上位で1室、雌しべは1個で花柱は細く柱頭は点状。
果実は液果状の核果。直径6-8mmの球形で11月に数個が赤く熟し、鳥に食べられなければ翌年の4月まで残る。核は1個。直径5-6mmの扁球形で鈍い5稜がある。

果実が白いもの、黄色いものがあり、それぞれシロミタチバナ、キミタチバナという。
花期:6-8月
分布:本(福島・新潟県以南)・四・九・沖
撮影:2016.6.30 神奈川県横須賀市
カラタチバナ-2
花はマンリョウと似ているが、葉は細長い。 2016.6.30 神奈川県横須賀市

カラタチバナの若い果実
若い果実。 2020.10.21 横浜市金沢区

果期のカラタチバナ
樹林下で赤い実を鈴なりにつけていた。 2019.12.16 横浜市磯子区

カラタチバナの果実
鳥に食べられなければ春まで残る。 2019.12.16 横浜市磯子区

カラタチバナの幼木
なかなか見かけない植物だが、幼木も数株確認できた。 2019.12.16 横浜市磯子区

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