キブシ(キブシ科)[木五倍子] |
まだ風冷たい早春、芽吹き前の雑木林を歩いていると、葉の出ていない枯れ木のような枝先に、かんざしの下がりを思わせる花穂を垂らしている木と出会う。それがキブシで、マルバマンサクとともにみちのくにもいち早く春を告げてくれる。 湿り気がある明るい林縁や山地の道端などに生え、よく分枝して高さ2-5mになる雌雄異株の落葉低木~小高木。樹皮は赤褐色~暗褐色。枝に稜があり、表面は無毛でやや光沢があり、裏面は淡緑色で脈上に毛がある。 葉は互生し、長さ7-14cm、幅3-6cmの楕円状卵形~長楕円形で縁に鋭い鋸歯があり先は尾状に長く伸びてとがり、基部は円形~浅い心形。葉柄は長さ1-4cm。 葉の展開前に、前年枝の葉腋から長さ4-10cmの総状花序をつり下げ、多数の花をつける。雄花序は長く、雌花序は短い。花は長さ6-9mmの鐘形。雌花は雄花よりやや小さい。花弁は4個、萼片は暗褐色で4個あり、うち内側の2個が大きく花弁状。雄花は淡黄色、雄しべは8個で花弁より短く、雌しべは雄しべより短い。雌花は淡黄緑色で雄しべが退化して短く、雌しべが花外に少し突き出る。 果実は7-10月に熟し、径0.7-1.2cmの球形~広楕円形で黄褐色の乾いた液果。種子は長さ約2mmで多数。 果実には多量のタンニンが含まれ、ヌルデの虫こぶから作る五倍子(ゴバイシ=フシ)の代用として黒色の染料に使用された。お歯黒の原料としても使われた。髄は太く、灯心として利用された。黄色い花を藤のように垂らすのでキフジ(黄藤)ともよばれるが、名は木五倍子の意味でついたもの。 地域的な変異が多く、葉の裏面の葉脈に白毛が密に生える品種をケキブシといい、日本海側の多雪地に分布する。箱根に葉の長さが3-6cmと小さいものがあり、コバノキブシという。伊豆諸島などには花序が長く、花がやや大きいハチジョウキブシが分布する。 花期:3-4月 分布:北(西南部)・本・四・九 撮影:2009.5.10 秋田県湯沢市 |
雄花。長い雄しべが目立つ。 2018.3.26 神奈川県平塚市 雌花。雄しべは退化して短い。 2018.3.15 横浜市金沢区 若い果実。 2020.6.10 神奈川県大磯町 来春の準備で萌えだした花穂。 2016.11.16 横浜市戸塚区 まだ10月なのにしっかり花芽が準備できている。 2021.10.11 横浜市金沢区 新葉の展開。 2019.4.1 川崎市多摩区 樹皮は赤褐色~暗褐色で皮目が目立つ。 2019.3.14 横浜市金沢区 |
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