スベリヒユ

スベリヒユ(スベリヒユ科)[滑莧]

名の「滑り」は、ゆでて食べるとぬるぬるすることから、ヒユはヒユ科の1年草のことで、果実が蓋果で似ていることからついたもの。

道端や畑の日当たりのよいところに普通に生え、ときにコンクリートの割れ目にも生える多肉質の1年草。代表的な畑雑草で、強害草として駆除される。茎は帯褐紅色で平滑な円柱形で、地をはい分枝して広がり、上部はときに斜上して長さ15-30cmになる。
葉は互生し、多肉質で無毛、光沢があり、長さ1-2.5cm、幅0.5-1.5cmの倒卵状楕円形で全縁、先は円く基部はくさび形でごく短い柄となる。葉の裏面が光るので、かつては水銀が含まれていると信じられていた。
枝先に集まった数個の葉の中心に無柄の花を3-5個つける。花は直径6-8mm、朝早くに日が当たると開き、受粉が完了したり暗くなると閉じる朝咲きの一日花で、早起きが苦手な私のような者はなかなか花を見ることができない。小苞(萼とすることもある)は緑色で2個あり、下部子房に合生、背部に稜がある。花被片は黄色の花弁状で5個、長さ4mmの倒卵形で先はへこみ小苞の外に僅かに出る。雄しべは7-12個あり、花被片とともに小苞につく。雄しべは刺激を与えるとその方向に曲がる。雌しべは1個で花柱は5裂する。
果実は長さ5mmの長楕円形の蓋果(横に裂開する蒴果)で、熟すと上半分が帽子のようにはずれて種子を散らす。種子は直径0.5mmのゆがんだ円形で黒色、縁はざらつく。

食用として、よく太った茎を生のまま、または夏のよく晴れた日にゼンマイのようによくもみながら1日で乾燥したものを利用する。昔から全国的に食べられていたが、特に山形県では「ひょう」とよばれて親しまれ、今でも普通に山菜として扱われている。
酸味と粘り、かすかな甘みがあり、辛子醤油とよく合う。だだし、生のものを多食すると下痢する人もいるので注意が必要。ヨーロッパではパースレイン、プルピエなどとよばれ、野菜として一定の地位を占めているという。
薬用としては夏場に全草を日干ししたものを馬歯莧(ばしけん)とよび、解毒、利尿、浄血に利用する。虫刺されには生葉の汁を擦り込むとよく効く。

属名をそのまま名に使った栽培種のポーチュラカ(ハナスベリヒユ)はスベリヒユの園芸品種で、花の色は黄色のほか紅色やピンクなどもある。昔から栽培されているマツバボタンも同属で、ポーチュラカといえば以前はこのマツバボタンのことであったが、ハナスベリヒユにとって代わられた。
花期:7-9月
分布:日本全土
撮影:2023.8.10 横浜市中区
スベリヒユ-2
花は朝咲きの一日花。 2023.8.10 横浜市中区

スベリヒユ-3
午前10時の撮影だがすでに花がしぼんでいる。 2016.10.20 神奈川県三浦市

スベリヒユの葉
葉は倒卵状楕円形、多肉質で光沢がある。 2004.8.29 青森県八戸市

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