ハクサンフウロ(フウロソウ科)[白山風露] |
江戸後期の草木図説(飯沼慾斎著)にはすでにこの名で載っていた。フウロの由来についてはっきりしたことは分かっていない。通説は花びらに小さな朝露が乗って揺れ動いている美しい情景を表したものとする。中村浩は「植物名の由来」で周囲が木で囲まれている草刈場を「ふうろ場」とよんでいた地方があり、そこに生える草だからという。これに対し深津正は「植物和名の語源探求」で、「正確には分からないが」とことわりつつ、「『荘子』の『風に吹かれ露を飲む』の句によったもので、俗界を離れ、仙境に生ずる草の意味で名付けれらたものではなかろうか。」とおおむね通説を支持し、中村説を無理なこじつけとして否定している。別名アカヌマフウロという。 亜高山帯~高山帯の日当たりのよい湿った草原に群落をつくる多年草で、高さ20-60cmになる。ハクサンイチゲなどとともにお花畑を彩る重要なメンバーで、エゾフウロの変種とされる。茎に下向きの短い伏毛が生える。 根生葉は長い葉柄があって下向きの粗い毛が生え、長さ4-8cm、幅5-10cmで掌状に5-7深裂し、裂片はさらに3出状に2-3中裂する。終裂片は幅1-3mm。表面は伏毛があり、縁と裏面脈上に粗毛がある。茎葉は対生し、柄は短い。葉は秋に朱色に紅葉する。 花は上向きに咲き、淡紅色~紅紫色で直径2.5-3cm、花柄や小花柄には下向きの屈毛が密生する。花弁は5個、倒卵形で基部に白い軟毛が密生する。花弁には数本の淡紅色の筋が入るが、花色が濃いせいかそれほど目立たない。花弁の先に切れ込みはない。雄しべは10個あり放射状に並ぶ。萼片は長さ1-1.2cmの舟形で先は芒状で少ないながら短い伏毛がある。小花柄は果期には下を向く。 果実はゲンノショウコによく似て直立した長さ3cmの蒴果で、熟すと5裂して裂片は巻き上がる。 まれに花が白いものがあり、シロバナハクサンフウロという。 この仲間は毛の多少や生え方などで区別され、同定の難しいものが多い。イブキフウロは北アルプスに生え、全体に毛が少なく、花弁の先は切れ込み、萼片に密度は低いが開出毛がある。エゾフウロは北海道、東北地方に分布し、茎や葉柄に粗毛があり、萼片には開出毛が密生する。花弁が重なるように咲く。この2種については区別しない見解もある。東北北部から北海道は花の大きいチシマフウロと入れ替わるが、これはタカネグンナイフウロに近い種。 花期:7-8月 分布:本(中部地方以北) 撮影:2008.8.3 長野県白馬村 |
高山の湿った草原に咲く。 1998.7.20 富山県大山町 花は上向きに咲く。 2008.8.3 新潟県糸魚川市 花は上向きに咲くが、このように横向きのものも。 2004.7.16 静岡市葵区 |
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