フジ

フジ(マメ科)[藤]

名の由来ははっきりしていないが、つるの繊維で布が織られていたことから、糸かけである「(綜)を打つ」を意味する「綜打ち」が転訛したとの説がある。その他、つるをムチにしたことから、「ぶち」がふじに転訛したという説、吹き流しを意味するフキチリ(吹散)の転訛説など、取るに足らない説も含めて多数ある。別名ノダフジといい、摂津の国野田村(現在の大阪市福島区)がフジの名所だっだことからついたもの。
万葉集ではフジを詠んだ歌が27首あり、古くからその優美な花姿が愛されてきたことが分かる。家紋にも多く使われ、数十種あるという。観賞用に栽培され、多くの園芸品種があり主に棚づくりにする。花や新芽は食用にされ、果実は薬用(緩下剤)に利用される。つるはかごなどの工芸品の材料や縄の代用にされる。

平地~低山の林縁や崖に生えるつる性の木本で、高木に巻きついて登る。つるはS巻き(上から見て時計回り)に巻き上がる。樹皮は灰褐色でやや縦に浅く裂ける。
葉は互生し、長さ20-35cmの奇数羽状複葉。小葉柄は長さ3-4mm。小葉は5-9対あり、長さ4-10cmの長楕円形~狭卵形で質は薄く、基部はくさび形~円形、先はやや尾状にとがる。縁は全縁で大きな波状になる。両面とも初め毛が密生するが、後にほぼ無毛となる。
本年枝の枝先に0.3-1mの長い総状花序を下げ、花序の基部の方から順に咲いていく。軸には花柄や萼とともに白短毛が密生し、花柄は長さ1.5-2.5cm。花は紫色~淡紫色、長さ1.5-2cmの蝶形花で芳香がある。萼筒は長さ4mmの広鐘形、萼片は5個で上の2個はごく小さく、下の3個は長さ2-4mmで先が鋭くとがる。苞は長さ1cmの披針形で有毛、早く落ちる。旗弁はほぼ円形で先端が僅かに突出し、基部は心形。翼弁は長さ1.4-2cm、竜骨弁は雄しべと雌しべを包み、先で合生する。雄しべは10個で9個と1個の2体。子房は柄があり、柱頭は小さい。
豆果は長さ10-20cmの扁平な線形で硬く、短毛が密生する。乾燥すると2裂してねじれ、種子をはじき飛ばす。種子は直径1-1.4cmの扁平な円形、褐紫色で光沢がある。

白花をつける品種をシロバナフジという。
中部地方以西に生えるヤマフジは、花序の長さが10-20cmと短くて丸っこく、花はほぼ一斉に開き、つるはZ巻き(上から見て反時計回り)、小葉は4-6対、苞は卵形であることで区別する。
花期:4-6月
分布:本・四・九
撮影:2008.5.18 秋田県八峰町
フジ-2
2021.4.27 神奈川県厚木市

フジ-3
2017.5.16 神奈川県横須賀市

フジ-4
2023.4.20 神奈川県三浦市

フジの蕾と若葉
蕾と新葉。 2021.4.12 神奈川県厚木市

フジの花序
花は基部から咲き初め、垂れ下がる。 2017.5.2 神奈川県逗子市

フジの果実
豆果は2裂してはじける。 2016.10.11 神奈川県三浦市

フジの裂開した果実
裂開した豆果。 2018.5.18 神奈川県三浦市

フジのつる
つるはS巻き(上から見て時計回り)に巻き上がる。 2023.7.6 横浜市南区

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