オオバコ(オオバコ科)[大葉子] |
名は葉が広くて大きいことから「大葉っこ」といっていたことからついたもの。漢名を車前(しゃぜん)という。漢方では茎葉を車前草、種子を車前子といい、鎮咳、利尿など多くの薬効がある。
平地から高山の山小屋の前まで、他の草が生えることができない人通りの多い踏みつけの強い所に適応した一風変わった生き方をする。踏みつけの弱い場所では他の草が生い茂るので、生きていくことができない。種子は濡れるとゼリー状に粘り、人の靴や車のタイヤについてどこまでも運ばれていくので、高山の山小屋の前でも見られ、しばしば問題となっている。こうしたことから、国の生態系被害防止外来種リストの国内由来の重点対策外来種として「高山帯のオオバコ」が選定されている。 子供の頃、この草の花茎を絡ませて二人で引っ張り合い、切れたほうが負け、という遊び(おおばこ相撲)をした思い出があるが、昨今の子供はこんな遊びはしないのだろう。地方によっては花茎ではなく、葉柄を使うところもある。 かつては葉の縮れたもの、斑入り、紫色のものなどを珍重して栽培したという。若葉はゆでて食用にする。筋が強いのでナイフで刈り採る。 日当たりのよい農道、寺社の境内、公園、山道など人通りの多い道上に普通な多年草。根は地中を四方に広がる。 葉は10個ほどが放射状に根生し、光沢はなく無毛だがときに白毛を散生する。葉身は変化が大きく、やや薄い長さ4-20cm、幅3-8cmの卵形~広卵形または楕円形で5本の平行した脈があり、先は鈍く、縁は全縁で波打つか不明瞭な波状の歯牙があり、基部は急に細まって長さ5-10cmの葉柄となる。葉柄の断面は半月形。 高さ10-30cmの花茎を根元から数本伸ばし、花茎の長さの1/2ほどの穂状花序に白色の花を密につける。花は無柄で苞の腋ごとに1個つく。花序の下から順に咲いていき、雌性先熟でまず柱頭が萼の間から突き出て風に乗って飛んできた花粉を受け、あとから4個の雄しべが伸び出して風で揺れた葯から花粉を飛ばす。花冠もこの頃に伸びる。苞は萼片より小さい狭卵形で先は赤みを帯び、鈍いかややとがる。萼は筒状で4裂し、萼片は長さ2mmの卵状楕円形で先は鈍く、縁は乾膜質で白色。花冠は白色で長さ5mmの筒形で先は4裂して開出する。雄しべは4個で花筒に付着し、花冠から長く突き出る。葯は紫色または白色で2室。 果実は長さ約4mmの長楕円形の蒴果で、上下2片に裂開して上半部が帽子を脱ぐようにはずれる蓋果。上半部は萼の2倍長の円錐状卵形でややとがる。種子はふつう1果内に6-8個あり、黒褐色で長さ1.5-1.8mmの長楕円形、濡れると粘り、靴の裏側や車輪について運ばれる。 屋久島の山地上部に生える変種ヤクシマオオバコは、全体に小さく、葉は長さ1-2.5cm、花茎は高さ5-10cm、1果内の種子は4-6個。本州から九州の海岸に生えるトウオオバコは葉が大きく長さ8-25cmで先がとがり、花茎は長さ0.4-1mになる。 セイヨウオオバコは1果内の種子は8-16個で横断面で6-7個が見える。全体に大型だが見かけはオオバコとよく似ており、見過ごされているものが多いと推測される。 花期:4-9月 分布:日本全土 撮影:2005.8.27 秋田県大館市 |
花序の下から咲いていき、雌性先熟でまず柱頭が突き出て花粉を受け、あとから4個の雄しべが伸び出す。画面上に柱頭を伸ばした雌性期の花がある。 2017.5.16 神奈川県横須賀市 上のほうに風媒による花粉を受けとる工夫なのかブラシ状の柱頭が見える。 2020.5.1 横浜市中区 |
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