オニドコロ(ヤマノイモ科)[鬼野老] |
名の由来はトコロの仲間で一番根茎がごつごつしていることからついたものか。またはその生長力によるものか。別名を単にトコロといい、その由来は、①イトコリ(最凝)の意②根に塊ができることからトコリ(凝り)の意③とろりと凝った汁になりコロコロしているという意味、など諸説あるが不明。「野老」の字はエビを海老と書くように、曲がった根茎を老人に、ひげ根を老人のひげにたとえ、野に生えることからという。 山野に普通に生えるつる性で雌雄異株の多年草。根茎は肥厚して不規則に短く分枝し、ふつう横に伸びてひげ根を出す。茎は無毛で長く伸びて他物にS巻き(上から見て時計回り)に巻きつき、長さ3mほどになる。 葉は常に互生し、長さ幅とも5-12cmの円心形~3角状心形で全縁、質は薄く先は長くとがる。表面は無毛で裏面は脈上に不明瞭な小突起がある。葉柄は長さ3-7cmでむかごはできない。 雄株では葉腋から1-5個の円錐花序を直立し、長さ1.5-2mmの花柄の先に雄花をつける。雄花序は直立するが、花付きのよい株では上の写真のように一度は立ち上がっても重さに絶えきれず、ついには垂れ下がっているものも多い。花被片は黄緑色で6個、長さ1mmの長楕円形で平開し上縁に微歯がある。雄しべは6個で完全。雌株では葉腋から細長い穂状花序を下垂する。雌花の花被片は6個、子房は下位で3室、各室に2個の胚珠がある。花柱は3個でそれぞれさらに2裂する。 果実は長さ1.5-1.8cm、幅1.4cmの倒卵状楕円形の蒴果で3翼がある。種子は長さ4-5mmの扁平な楕円形で、片側に長楕円形の薄膜状の翼がある。 オニドコロの根茎は、どの図鑑を見ても苦くて食用にはならないと書いてあるが、それは日本全国を見渡して書かれたものではない。ジオスチンというサポニンを含み、過食すると胃腸がただれるし、魚毒としても使用されてきたことを思えば、そういわれるのも無理はないのだろう。しかし古来食用とされてきたもので、青森県では朝市や道の駅、産直にも並ぶ嗜好品の一つである(おそらく北奥羽各県でも)。あく(毒)を抜いても確かにひどく苦いが、好んで食べる人も少なくない。「胃薬になる」とか「便秘に効く」という話も聞いたことがある。かつては救荒食として重要な産物だったようで、その名残かもしれない。 根茎を秋に掘って輪切りにして日干ししたものを萆薢(ひかい)といって風邪、腰痛、リウマチなどに効果があるという。長いひげ根をもった根茎を翁になぞらえて長寿を祝う正月行事の飾りとする風習は、江戸時代まで広く行われてきた。 ヒメドコロは葉が細く、雄花序、雌花序とも垂れ下がる特徴があるが、オニドコロでも雄花序が垂れ下がった状態のものもあるので注意が必要。ヒメドコロは雄花の雄しべが束状に中心に集まるがオニドコロは外側に湾曲する。ウチワドコロは葉の縁が浅く切れ込む。ヤマノイモは葉が3角状披針形で対生し、花は平開しない。葉腋にむかごをつける。果実の翼は横長。ニガカシュウは葉がやや似ているが、雄花序も雌花序も下垂し、むかごができる。 花期:7-9月 分布:北・本・四・九 撮影:2010.8.22 岩手県陸前高田市 |
雄花序は葉腋から立ち上がる。トップ画像のように垂れ下がっているものもある。 2016.7.27 横浜市戸塚区 雌花序は下垂する。 2017.8.28 横浜市緑区 雌花は平開する。 2017.8.28 横浜市緑区 葉は円心形~3角状心形。むかごはできない。 2002.9.20 埼玉県日高市 若い果実。翼は縦長。先端に花が残っている。 2016.8.4 神奈川県横須賀市 |
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